診療報酬下げ圧力
改定方針了承
財務省など牽制
医療行為や薬の公定価格である診療報酬の引き下げ圧力が強まっている。
厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会(厚労相の諮問機関)は25日、来年度の診療報酬改定の基本方針を大筋了承。
通例ならこの方針に沿って改定作業が進むが、財源が乏しい中で早くも財務省などから「牽制球」が飛ぶ。
深刻な医師不足解消のため、民主党はマニフェスト(政権公約)で2011年度に1.2兆円、12年度からは1.6兆円をつぎ込む方針を明記。
診療報酬の引き上げも、規定路線のはずだった。
この日の基本法新案も、医療の原状について医師不足など
「危機的な状況に置かれている」
と認定。
その上で
「救急、産科、小児、外科などの医療の再建」
「病院勤務医の負担軽減」
の2点を重点課題に示し、救急医療などの報酬を手厚くすることを求めた。
しかし、肝心の診療報酬全体については
「医療費全体の底上げを行うべきだ」
という意見と、
賃金低下や失業率の上昇などの経済状況から
「全体を引き上げる状況にはなく、配分の大幅な見直しで対応すべきだ」
という両論の併記に。
消極論が出るのは、様々な介入と無縁ではない。
行政刷新会議の「事業仕分け」は今月11日に「診療報酬の配分」を取り上げた。
仕分け人から従来の改定への疑問が続出し、結論は「見直し」だった。
背景には、財源問題がある。
来年度予算の概算要求は95兆円に膨れ、そのうち厚労省分が約29兆円に上る。
診療報酬を1%引き上げるには約850億円の国費が必要だ。
財務省の野田佳彦財務副大臣は19日の記者会見で、物価や公務員の給料が下がる中で診療報酬が上がることを牽制し、引き下げの方向で予算編成に臨む方針を表明。
財務省は、必要な部分への配分は薬価の大幅引き下げなどで賄うべきだとの見解だ。
年末の予算編成過程で診療報酬の改定率が決まり、財源が固まる。
長妻昭厚生労働相は20日の閣議後会見で
「かねて申し上げているように、ネット(全体)でプラスだ」
と反論するが、すでに外堀を埋められた格好だ。
(2009年11月26日 朝日新聞)

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