PowerCranks、考えれば考えるほど、面白い道具です。
見たことも、触ったことも、使ったことも無い現在ですが、その立場で考えるのも楽しいものです。
スノーボードを2枚の板に履き替える。
そんな感じなのかなー、と思っています。
「自由」、というのは、私のバイクライドのテーマのひとつかもしれません。
走る自由、乗る自由、できることが広がる、という意味での自由。
ビンディングは足を固定してしまいますが、それによってより回転の自由を手に入れたような気がします。そういう意味では前向きの拘束(?)。
さてPowerCranks。
ライダーならばペダリングの矯正、よりくるくる廻せるための練習用デバイス。そんなふうにみるでしょう。代理店もそういうふうに売ってくると思います。
でも本質はもっと深いところにあると思います。
PowerCranksをとりつけると、片足ペダリングが常にできる状態。というか、片足ペダリングしかできない状態になります。
まず一番大きな変化は、左足の重さが右足に伝わらなくなる、ということです。
通常のクランクは左右つながっていますから、左足の重さが右足に影響しています。こんなこと、当たり前すぎて書くのもためらわれるようなことですね。
そうすると、利き足の強さが反対の足に殺されてしまう、ということにもなります。
左足の回転むらは、左足が悪いためなのか、それとも右足に原因があるのか。別々に切り離して考えるのは非常に難しいです。なぜかというと、つながっているからです。片足を外したペダリングは、フォーム自体が崩れてしまいますから、正確に把握するのは困難といえるでしょう。
PowerCranksでは、左右が独立しています。ホームページなどをみると、まずここが強調されていますね。
効き足の強さは反対側の足の重さには無関係。存分に発揮できます。一方に回転むらがあっても、反対側の足には影響しません。だからどちらの足を改善したら良いのか、はっきりと確認できます。問題点の抽出がしやすいといえるでしょう。
反対に、一見デメリットと思える点が出てきます。
通常のクランクの場合(12時から6時に向かうペダリングと、6時から12時に向かうペダリングを便宜上、踏み足、引き足、と書きます)、踏み足の力は引き足の補助になり、引き足の力は踏み足の補助になっています。これは「きれいな回転ができていれば」の話です。
片方の勢いにもう片方をのせられない。そういう点がPowerCranksにはあります。(しかしそういう風にしたものだと考えるべきなのでしょう。)
PowerCranksにすると、たいていの人は踏み足のほうが強いので、引き足が辛くなると思います。引き足は今や勝手に持ち上がってくれないからです。したがって引き足を中心にトレーニングすることになると思います。
PowerCranksで引き足を練習するということは、体幹を鍛えることにつながります。それはなぜか。
引き足は「膝を強く曲げることだ」と勘違いしている人も多いです。私もそういう時期がありました。
ですが、無理に膝を曲げようとすると膝関節や靱帯を傷めます。それでもどうしてそういうことをしてしまっていたのか。
通常のクランクでは、引き足は弱くても、反対側の踏み足の力で持ち上げてくれるので、なんとかなってしまいます。小さな力でいいという場合、力の出し方はいろんな方法がとれ、ごまかしがきくので、膝で持ち上げる、という訳の分からないことをしてしまうのです。
この誤解がどうして多いのかは、また別の理由があって、私が思うには、クランクの6時から9時くらいまでの間、「シューズの裏をこするように〜」とかなんとか、脚の先端の見た目の動き(動作の結果)を説明する解説ばかりが巷にあふれているからだと思います。(肝心な、「その力はどこから作り出すか」は書いてない。大事なのは正しい動作の結果、見た目が一緒になることであって、見た目を一緒にすることではありません。)
しかし片足ペダリングをすれば分かりますが、自分の足の重さをもち上げるには、腰から持ち上げないと疲れやすく、続かないということが分かります。PowerCranksでは、ごまかしが効かなくなるのです。
腰から持ち上げるためには、体幹がしっかりしていないと続きません。トレーニングしていると、自然に体幹ができてくると思います。
(注意)私の個人的な考えでは、「引き足」部分では足の自重を持ち上げる力だけで十分であり、トルクを発生させる必要はないと思っています。
体幹がしっかりするようになり、独立した回転もスムーズになった場合、普通のクランクに戻したときの効果はどうなるのか。引き足の重さは体幹で持ち上げるので、左足の重さは右足の踏み込みの邪魔になりません。それぞれ回転もスムーズになったので、どんどんスピニングがかかります。そうするといい意味での相互作用がはたらくでしょう。
私が考えるところでは、これがPowerCranksの効果なのだと思います。
スムーズな回転と強い体幹はこれを使わないとダメなのか、というとそういうことはありません。通常のクランクでもそういうトレーニングをして、上達している人は多いと思います。しかし、そのためにはかなりの強い意識づけが必要と思います。
PowerCranksは自然に「そういう動作をしなければならない状態」にもっていってくれるので、多少勘違いしていようがとにかくペダリングさえ続けていれば、知らないうちに体幹は強くなり、回転もスムーズになるのです。(たぶん)
やはりかなり興味をそそられますねー。
残念なことは、ホローテック2のBB対応モデルがないこと。これが出たら交換も簡単ですからね。