人工心臓、国産植え込み型承認へ 年内にも 在宅で移植待機可能
重症の心臓病患者の体内に植え込んで使える国産の補助人工心臓2機種が、年内にも製造販売を承認されることになった。
厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会が19日、承認することを了承した。従来、国内の補助人工心臓は医療機関で使う体外式しかなかった。植え込み型によって、患者は在宅で心臓移植の機会を待つことが可能になる。
承認されるのは、サンメディカル技術研究所(長野県諏訪市)の「エヴァハート」と、欧州では3年以上前に承認されているテルモ社(東京都渋谷区)の「デュラハート」。
植え込み型は、海外の2機種が承認されていたが、製造が中止されたり、日本人には大きすぎたりして、現在は国内販売されていない。国産の2機種は手のひらサイズで、女性や体の大きい子どもにも使える。
国内では脳死移植数が少なく、心臓移植を希望しても長期間待つ必要がある。2機種は、電源などの付属装置も持ち運びでき、待機期間の生活の質が向上すると期待される。
「補助人工心臓治療関連学会協議会」代表の許俊鋭・東京大学特任教授は、「患者にとってメリットは大きく、ようやく欧米並みに一歩近づいた」と話している。
(2010年11月20日 読売新聞)
各種新聞がこの記事を取りあげています。
日本は、医薬品だけでなく医療機器も諸外国に比べると遅れを取っているのが現実です。
医薬品の遅れを「ドラッグ・ラグ」というのに対して、医療機器では「デバイス・ラグ」と言っています。
産経ニュースにはこのように書かれています。
欧米は小型の埋め込み型が主流だが、日本では大きな機器を体につなぐ体外設置型が使われ、入院を余儀なくされる。海外で使用されている医療機器が日本で使用できない「デバイス・ラグ」の典型例だった。
今回承認が認められた機種はサンメディカル技術研究所(長野)の「エバハート」とテルモ(東京)の「デュラハート」。厚労省の検討会で「早期導入の必要あり」と認定され、優先的に審査されていた。
「今使われている体外設置型は海外なら博物館に展示される“骨董(こっとう)品”。やっと世界レベルの機器が使える」。東大大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座の許俊鋭(きょ・しゅんえい)特任教授は今回の認定に胸をなで下ろす。
国産の人工心臓2機種を年内に承認 デバイス・ラグ解消へ一歩 - MSN産経ニュース 2010.11.19
日本国内では今まで骨董品のような体外設置型のものしか使えなかったので、埋め込み型の人工心臓が待望されていたようです。
ところで「エヴァハート」という名前に見覚えはないでしょうか。
どこの新聞web版をみてもそのことに言及されてませんが、国立循環器病センター(現独立行政法人国立循環器病研究センター)での治験での出来事がありました。
あの件はどうなったのでしょうか?
週刊誌やマスコミがセンセーショナルに報道しただけだったのでしょうか?
そこはあえて触れてはいけない地雷のようなものでしょうか?
その件とは切り離して承認の方向に向かっているのは、その機械が使えれば延命ができる患者さんやご家族にとって喜ばしいことだと思います。
【関係ページ】
2009/6/27「循環器病センター治験死亡事故報告書」
2009/1/23「治験の補助人工心臓でまたもめている」
2008/12/18「人工心臓治験:事故調査委員会設置へ」
2008/12/17「治験で人体実験報道」