試験データ不正問題、田辺三菱製薬と子会社を業務停止に
asahi.com(朝日新聞社)2010年4月13日23時59分
厚生労働省は13日、やけどや大量出血のショック時に使われるアルブミン製剤の承認申請に必要な試験データを不正に差し替えたり、捏造(ねつぞう)したりした行為が薬事法違反に当たるとして、田辺三菱製薬(大阪市)を17日から業務停止25日間、製造した子会社バイファ(北海道千歳市)を14日から同30日間の処分にした、と発表した。
厚労省によると、承認をめぐる不正で大手製薬会社を業務停止にするのは極めて異例。田辺三菱は直接製造していないが、薬の有効性や安全性に責任を負う立場にあることを重くみた。
厚労省の調べによると、問題の製剤は、遺伝子組み換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注5%」と「同25%」。製造販売承認申請の際、同省に提出した試験データのうち、アレルギーの反応試験で品質不適合となったサンプルを適合するものと取り換えるなど、1999年から09年にかけての計16項目の薬事法違反が明らかになった。
違反とまでは言えないが、不正な行為も15項目判明。田辺三菱の研究所職員がバ社の研究者に「都合のいいデータを採用して報告するように」などと助言したこともあったといい、不正を誘発する指示だったと認定した。
処分により、田辺三菱は処方箋(せん)が必要な第1種医薬品の多くを出荷できなくなるが、関節リウマチの治療薬「レミケード」など他の薬で代えられない7品目は除かれた。第2種医薬品(大衆薬)131品目なども販売できる。
メドウェイは、世界初の遺伝子組み換えアルブミン製剤として、バ社と旧ミドリ十字(後の田辺三菱)が97年に承認を申請。田辺三菱が07年に厚労相の承認を取得、08年5月に発売した。田辺三菱はデータの差し替えを09年3月に公表。同製剤(5%)の承認取り下げを厚労省に届け出て、5%と25%の双方を自主回収した。
田辺三菱の土屋裕弘社長は同夜、東京都内で記者会見を開き、「生命にかかわる医薬品企業では、あってはならない不適切な行為で、深くおわびする」と謝罪した。同席したバ社の藤井武彦社長も「職業人としての自覚と心得をおろそかにしていた」と述べた。
2009年3月に田辺三菱製薬の方から厚労省に対して、メドウェイ注5%製剤の承認申請時資料でバイファ社がデータの差し替えを行っていた旨の報告をしています。
ニュースリリース|田辺三菱製薬株式会社:遺伝子組換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注5%」製造販売承認の取下げ
および「メドウェイ注5%」「メドウェイ注25%」自主回収に関するお知らせ
(2009年3月24日発表)
それで事実関係の調査をした結果、薬事法違反が見つかったので、バイファ社と田辺三菱製薬に対して行政処分がくだったということです。
該当のメドウェイ注は既に2009年3月時点で自主回収が済んで、さらに2009年7月には5%製剤は製造販売承認が整理されていますので、現在承認されているのは25%製剤だけということになります。
今回の行政処分により、田辺三菱製薬は2010年4月17日から5月11日までの25日間業務停止となります。
医療現場にいる薬剤師として一番心配しているのは、関係している薬の流通がストップしてしまい、薬局の在庫がなくなって患者さんに迷惑がかかるということです。
その点は、それほど問題なさそうです。
製造販売業者である田辺三菱製薬(株)の業務停止にあたっては、既に販売された医薬品の安全管理業務をその対象から除くとともに、代替性が無く保健衛生上重要なものであって、安定供給がなされない場合、医療現場に混乱を生じさせる恐れがある医薬品(セレジスト(セレジスト錠5)、タナドーパ(タナドーパ顆粒75%)、デノシン(デノシン点滴静注用500mg)、ノックビン(ノックビン原末)、バリキサ(バリキサ錠450mg)、リーゼ(リーゼ錠5mg、10mg、顆粒10%)及びレミケード(レミケード点滴静注用100))についても対象から除くこととする
厚生労働省:薬事法違反業者に対する行政処分について(2010年4月13日)
という行政処分ですし、ここに書かれていない他の田辺三菱製薬の薬、例えばヘルベッサー錠やラジカット注などの薬は、問屋に2か月分程度の在庫があるようなので、薬の供給に関しては問題がないだろうということです。
そもそもメドウェイ注が従来のアルブミン製剤とどのように違うかというと、記事中にも書かれてますように遺伝子組み換え製剤となります。
遺伝子組み換えというと少々危ないような感じがしますが、安定供給と感染のリスクが少ないというメリットがあり、効果は従来のアルブミン製剤と同等であるとされています。
従来のアルブミン製剤は、ヒトの血漿を原料としており、日本ではその半数を海外からの輸入に頼っていた。国内では、日本赤十字社が献血で集めた血液を原料に生産しているが、献血量が減少している昨今、将来的な安定供給が危ぶまれている。また、現在の処理技術では、未知のウイルス等の感染の可能性を完全に否定できないなど、安全性確保の面でも問題が残されている。
その点、今回承認されたアルブミン製剤は、血漿を使用せずにピキア酵母により産生・精製した製剤であるため、安定供給が可能であり、感染のリスクが少ないといったメリットがある。臨床効果についても、従来のアルブミン製剤との比較試験で、同等であったことが報告されている。
世界初の治療用「遺伝子組み換えアルブミン製剤」:日経メディカル オンライン 2007年 11月29日より抜粋
【関係リンク】
厚生労働省:薬事法違反業者に対する行政処分について
ニュースリリース|田辺三菱製薬株式会社:薬事法違反に係る行政処分について(2010年4月13日発表)
ニュースリリース|田辺三菱製薬株式会社:遺伝子組換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注5%」製造販売承認の取下げ
および「メドウェイ注5%」「メドウェイ注25%」自主回収に関するお知らせ
(2009年3月24日発表)