解熱剤と間違って筋弛緩剤を投与された患者死亡、徳島
徳島県鳴門市撫養(むや)町黒崎の健康保険鳴門病院(増田和彦病院長)は19日、誤って抗炎症剤ではなく筋弛緩(きんしかん)剤を点滴で投与された70代の男性患者が死亡した、と発表した。当直医が電子カルテに薬剤の名称を記入した際に誤表示され、そのまま薬剤師が用意してしまったのが原因で、蘇生を試みたが意識が戻らなかったという。病院から届け出を受けた県警は業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師ら関係者から事情を聴いている。
同病院によると、この男性患者は肺炎と胸膜炎で入院していた。17日午後9時ごろ、39度を超える発熱があったため、看護師が当直医に連絡。当直の30代の女性医師は、患者のアレルギー体質を考慮して抗炎症剤の副腎皮質ホルモン「サクシゾン」の投与を決め、電子カルテのパソコン端末に記入。その際、最初の3文字(サクシ)だけを入力して薬剤名を検索したが、同病院でサクシゾンは扱っていなかったため、画面には筋弛緩剤の「サクシン」だけが表示された。
病院によると、医師は画面を見たが「サクシゾン」のことと思いこんだという。薬剤師は、投与の量が200ミリグラムと少なかったため不自然と思わず用意。点滴での投与を担当した看護師は、医師に「本当にサクシンでいいのですか」と口頭で確認したが、医師は「(点滴の時間設定を)20分でお願いします」とだけ答えたという。患者は投与から約2時間半後、意識不明の状態で見つかり、約2時間にわたって人工呼吸などを施したが死亡した。
同病院は、両方の薬品名が紛らわしいため、5年ほど前にサクシゾンの常備をやめていた。だが、女性医師は半年前に同病院に勤めだしたため、知らなかった。処方した薬剤が正しいかどうかの医師による確認は義務づけていなかったという。
記者会見した増田病院長は「カルテの入力だけで薬剤師に薬をオーダーしているのに、相互チェックの仕組みがなかった。医師の思いこみから、看護師による確認に気付かなかったのも誤りの原因。大変申し訳ない」と謝罪。電子カルテの表示の改善など再発防止に努める、と話した。
asahi.com(朝日新聞)2008年11月19日
筋弛緩剤サクシンとステロイド剤サクシゾンの間違いはありがちなんですけど、絶対にやってはいけない間違いの代表的な例に挙げられます。
特にサクシゾンを入れようとして、サクシンを入れてしまった場合、致命的な転帰をたどる場合が多いです。
該当の病院では間違いの防止のためにサクシゾンの採用を止めたとの報道になっています。
・・・実は私が勤務している病院もこれと同様の措置がとられています。
、処方・注射オーダリングシステムで薬をさがすときに、三文字入力をしてさがすことになっていますが、「サクシ」と入力すると、サクシンとサクシゾンと並んで表示されてしまい、リスクがあるということで、サクシゾンが採用中止になっています。
リスクマネージメントの観点から、サクシンとサクシゾンのどちらかを中止すべきであるということになって、サクシンは中止できないが、サクシゾンなら他にステロイド剤があるので中止にできる、という理由によりサクシゾンが中止になっています。
たぶん、この病院も同じことが議論されたのだと推測されます。
当直医は、半年前に赴任したばかりでサクシゾンが採用されていなかったことを把握していなかったために、処方画面(この病院では電子カルテだったと報道されています)で「サクシ」と入力し、でてきたサクシンをサクシゾンと思いこんで入力してしまったということです。
さらに薬剤師としては「投与の量が200ミリグラムと少なかったため不自然と思わず用意」したとの報道になっています。
サクシンの添付文書
用法・用量
通常成人は下記用量を用いる。
間歇的投与法
スキサメトニウム塩化物水和物の脱水物として、1回10〜60mgを静脈内注射する。この用量で筋弛緩が得られないときは、筋弛緩が得られるまで適宜増量する。
持続点滴用法
持続性効果を求める場合は、0.1〜0.2%となるように生理食塩液又は5%ブドウ糖液に溶かし、持続注入する。
通常2.5mg/分ぐらいの速さで注入する。
また、乳幼児及び小児に対する投与法として静脈内注射の場合1mg/kgを、静脈内注射が不可能な場合は2〜3mg/kgを筋肉内注射する。
薬剤師は、間歇的投与法では200mgは考えられませんので、持続点滴用法を考えたのだと思いますが、私の勤務病院では40mg1管のサクシンが採用されていますので、5管分・・・ちょっと違和感を感じます。
ここでひょっとして間違いではないかと、ピンとくるかこないかは薬剤師としてのセンスの問題かなとも思われます。
サクシンは通常手術室でしか使われませんので、病棟に出すということで薬剤師として違和感はなかったのかなあ・・・
たぶん病棟でサクシンを使う場面は気管内挿管時だと思いますが、それは持続ではされないので200mgという量にピンと来て欲しい・・・
夜中の出来事で、眠いところたたき起こされたのかと思っていましたが、時間は9時となってますのでまだ仮眠を取るには早いですね。
でも、私がその場に居合わせて薬を出さなければならないとしたら、その時冷静に考えることができるかというと、どうなんだろうと考えちゃいますけど・・・
サクシン200mgを20分で落としてしまったとなると、相当な量が一度に入ってしまったことになります。
看護師さんとしてはなんか変だと思って、「医師に「本当にサクシンでいいのですか」と口頭で確認したが、医師は「(点滴の時間設定を)20分でお願いします」とだけ答えたという」という対応がとられたことになっていますが、もう一回念のためにということは言えなかったのでしょうか。
いずれにしても、いろいろな部署でミスを止めることができなかったのだろうかと悔やまれます。