恩田陸の「蜂蜜と遠雷」を読んでいる。
刊行されたときから読みたいなと思っていて、数ヶ月前にKindleで購入したものの、他のビジネス本(爆)などにインタラプトされて積ん読になっていたところ、何かのきっかけで映画化されることを知り、今になってやっと手を付けたという次第。
読み始めたら止まらなくなって、先ほどもつい下巻をポチリとしたわけだけれども、恩田さんの筆致で圧巻なのは、なんと言っても、演奏者(というかコンテスタント)がゾーンに入ったときの表現なんじゃないかと思う。
それこそ読者も彼/彼女のゾーンを追体験しているかのような。
個人的に、アタシ、人生で4回ほどゾーンを体験したと思っている。
最初は友人の車に乗っていて交通事故に遭いかけて死ぬかと思ったとき。
3度目は「なか卯」で店員さんの手が滑り味噌汁がアタシの上にぶち撒けられそうになったとき。
そして2度目と4 度目は人前で歌を披露しているとき。
1度目と3度目はむしろ「フラッシュバック」と言った方がいいかもしれないけど、その4回ともに共通しているのは、周りのすべてがビデオのスロー再生のようにはっきり認知できること。
そしてその間、自分を空中から俯瞰しているようになり、自らの思考や感覚が研ぎ澄まされて、瞬時にベストの方策が編み出せ、行動に移せること。
あぁ、そういう意味であれば母親が風呂場で倒れて背骨折ったときもそんな感じだったかもしれない。
いずれにせよ、あの感覚は自ら生み出そうと思っても生み出せるものではないので、余計に恩田さんの文章に釘付けになってしまうんだろうな。
まるで思い出を反芻するかのように。
残りの半分を読むのがとても楽しみです。

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