天候も悪く肌寒そうだったので蟄居。
自室で読書としゃれ込みました。
読んだ本は吉田修一の「横道世乃介」。
最近映画化もされているようですね。
この小説、丁度時代が自分が学生時代を送っていた頃と殆どかぶっているので、手に取ったのだけど、ほんと「まんま」な感じ。
って僕はその頃まだ東下りはしていなかったけれども。
彼の小説は「最後の息子」や「春、バーニーズ」をはじめ、もう片手に余るほどは読んでいると思うけど、今回のこの小説も彼が「時間と記憶」を扱うことについての名手であることを再認識させてくれました。
特に最後の写真のシークェンスには鳥肌が立ったなぁ。
記憶、というか、経験というものは、その主体である当人よりも、むしろそれを一緒に体験した側に残ることも多いのだなぁ。
当人は忘れている、あるいは思い出すことすらできなかったりもするのに。
にやにや微笑みながらも胸の奥がズンと切なくなる物語でした。
惜しむらくは、主人公の造形自体が平凡というか曖昧だったことだけれども、むしろだからこそ、この物語が普遍性を獲得したのかな、とも思いました。
おすすめです。

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