「さぁ、絵を描こぉうじゃぁないかぁ」ってね。「んじゃぁ」ってね。描いてみる。「えぇ〜っと、あれあれっ!あれだよ、あれっ!おいっ!おまえっ!あれ持ってこいっ!すぐにだっ!」「はいっ!ただいま。」召使いが、給仕が、慌てて探してる。探し当てた。んで削ってるよ、先っちょを。”あれ”と名付けられた、命名されたものは、何の事はない。なんのこたぁ〜ねぇ。鉛筆なのだ。4Bのえんぴつ。
王様が、御主人様が偉そうに足を組みながらイスに座ってデッサン狂いの人物画を描き始める。それは、ちょっと曇り空な日曜日の昼下がりなのさ。風が強い日だったら更にグー。雲が流れてく。
えんぴつって減るね、使ってると減っていく。いっくら鉛筆削りをシコシコ廻しても、カッター・ナイフを時代劇の武者の立ち回りのごとく振り回しても、そんな行為の果てに先っぽをピンピンにトンがった状態にしててもね。使ってると減っていく。人間も同んなじだら?多くの人間がそんな感じだと思う。若かりし頃はトンがってても歳を重ねてくと自然と丸くなってっちゃうってもんなのさ。守るもの、大切なものができると、たとえ寒い日でも「今はこれでいいさ」って気持ちになっちゃうってもんなのさ。んでも気を付けよう。明日は暑いかも。気持ちも変わりやすいからね。何が起こるか解からんし。ベルベットな地下帝国より更に怪しげな空間から誘いが来るぜ。48億の個人的な憂鬱が絞られた2001トンのハンマーが、空から落ちてくる。それはVELVET SKY。
THE STREET SLIDERS。ザ・ストリート・スライダーズ。あぁ〜なんてカッコいい響き。さぁ、彼等の名前を呼んでみようっ!「ストスラ?」「ノーノーノーっ!」「ザスス?」「バカヤロっ!略し過ぎだっちゅーのっ!」。言うんだったら、呼ぶんだったら「スライダーズっ!」って『!』ビックリ・マーク付きで言おう!呼ぼう!そしたら通りを転がってゆこう。下り坂だったらエンジン止めてしまおう。”重力”なんて呼ばれてる力を無断拝借してしまおう。誰かのおかかえ運転手にはなりたくないのさ。『ブルース』って名前のチュッパチャプス舐めまわしながら、サルバドール・ダリ自慢のトンがったおヒゲに洗い立てのロックンロール・ティ〜シャ〜ツをハンガーに引っ掛けて陽光干ししようじゃぁないか。そんな光景のベランダで揺れていようよ。とりあえず踊ってりゃぁいい。なんとかなるって。とりあえずDance。
雲の隙間っから陽の光がこぼれる様に、西暦1983年発売の1stアルバム収録曲の中っから、ちょっとだけ溢れ出ていたのは文学詩の世界。それが村越弘明の世界。ハリーの世界。まるで路地裏のならず者が吹く口笛の音色。Exile On Back Street。Stray Cat Blues、野良猫の歌を唄う代わりに、のら犬にさえなれない歌を唄ってる。んでその後、アルバムを重ねる毎にその度数、文学度数が上がり続けてった感じがする。4Bのえんぴつが使われる度にトンがっていった感じがする。表現が、詞の世界が。丸くなってるけどトンがってるんだ。好きなように演ってるんだら、多分。意識的にも、多分。Easy Come, Easy Go。
めっちゃくちゃ気持ちがいい音楽、俺にとって。


《左》1983年発売、「SLIDER JOINT」。B面3曲目に『のら犬にさえなれない』収録。《真ん中》1983年発売、「がんじがらめ」。A面4曲目に『とりあえず,Dance』収録。《右》1984年発売、「JAG OUT」。B面2曲目に『Easy Come,Easy Go.』収録。


《左》1985年発売、「夢遊病」。B面1曲目に『今はこれでいいさ』収録。《真ん中》1986年発売、「天使たち」。A面5曲目に『VELVET SKY』収録。《右》1987年発売、「BAD INFLUENCE」。B面5曲目に『風が強い日』収録。
《真ん中》1989年発売、「SCREW DRIVER」。B面2曲目に『おかかえ運転手にはなりたくない』収録。
2007年3月30日(金)と4月1日(日)、浜松Rock Bar LUCREZIAにハリーがやって来る、ヤァヤァヤァ!

0