《3.ジェイ・パークにて》
大爆音が響いているよ。あっちでは見る事も無かった花が咲き乱れる公園で。「西暦2004年開催の浜名湖花博でも、こんな花々は無かっただろうな。まぁ、あんな催し物、俺は行かんかったけどな」なんて事、思い出しながら透は近づいているんだ、その公園へ。こっちへ来たって透は、あの頃の思い出に耽(ふけ)ったりして過ごす事がある。たぶん、みんなそうなんだろう、人間っつー生きもんは。でなきゃぁ、透がこっちに来てから出会い続けてる、いろぉ〜んなバンドマン達が、プロ・アマ問わずね、その頃の音楽をここでも演ってるって事に説明が付かないじゃないか?そうじゃないかい?
公園ん中に入った。人だかりが出来てる。芝生の上に寝転んでる奴もいる。踊ってる奴もいる。ほら、見てみろよ、シャボン玉だぜ。ぷわぷわぷわ。まるでウッド・ストック。まるでハイド・パーク。まるであの公園風景。
お店で配布してる双眼鏡で透は舞台を眺めた。ドラムス:ジョン・ボーナムだ、あれは確実に。だって髭もじゃだもん。ベース:ジョン・エントウィッスルだ、あれは確実に。だってガイコツ服だもん。ギター:ジミ・ヘンドリックスだ、あれは確実に。だって右利き用ストラトキャスター、左で使ってるもん。「あれぇ?ヴォーカル居ないじゃん。さっきっからインストばっかり演ってるし。ジミ唄やぁいいだに」。
「そんじゃぁ、ヴォーカル紹介するぜっ!」ジミ・ヘン叫んだよっ!♪タツタツタツタツ♪ジョン・ボーナムの前打ちリズム。♪ギャァ〜ギャギャギャギャギャギャァ〜ガァ〜♪ジミ・ヘン相変わらず、うるっさい。「おおっ!このイントロっ!”MOVE OVER”だぁ!」。
花柄の衣装で女性が登場っ!ジャニス・ジョップリンだった、やっぱり。
ジャニスの歌声聴きながら、透は「ねぇジャニス、こっちでも君は孤独なんだろうね、たぶん。コンサート終わったら俺んとこ来なよ。俺がそばに居てやるよ。そんで、ソバ御馳走してやるよ。一緒に喰いに出かけようよ。えぇっ?うどんの方がいいのぉ?しょうがないなぁ、もぉ。君のわがまま何でも聞いてやるよ。なになに?メルセデス・ベンツが欲しいって?よぉ〜しっ!わかったっ!おじちゃん、なんでも、こぉ〜てやるっ!なんでも欲しいもん、言いなはれっ!ありゃりゃぁ〜なんで、俺、関西人みたいな言い方してはるねん?」なんて思いを巡らしてる。そんな事してたら知らん間に公園野外コンサート終了してた。
公園を出て振り返ると看板があった。”J-PARK”って書いてある。
透がキビスを返し、しばらく通りを歩いていくと男に出会ったんだ。主夫(ハウス・ハズバンド)らしき佇まい。下駄を履いてる。竹ぼうきで掃除をしてる。落ち葉をかき集めてたんだ。透、その男に話しかけられる「お出かけですか?レレレのレー」。
丸メガネの男。それはジョン・レノンだった。
Cへ続くよ。
1971年発売、JANIS JOPLINのアルバム「PEARL」。A面1曲目に『MOVE OVER』収録。

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