そもそも「自分ってのは何者か?」って話でありまして。
☆ラジカセに付随してる《録音機能》なんてものを使ってカセットテープに自らの声を録音。もしくは自らの意志ではなくとも、たとえば友人の誕生日パーティーなんつ〜ものに出席しちゃったりして。その友人のご家族の方がラジカセ録音ボタンをオンしていたがために不本意にもおのれの声を後日、聞かされる羽目におちいってしまう。みたいな。いずれにしても自分の声を聞くってのは照れくさい。「こんな自分の声を周りの人たちはボクが喋る時には必ず聞いてるのか?恥ずかしい。みんな笑いをコラエてるに違いない」みたいな。稚拙(ちせつ)なモノを見せ付けられる気分。声は『聞けるもの』なのに『見れるもの』みたいな気分になってしまうんだ。まるで丸裸。
鼓動が激しい音を立てている。ドキドキしてるのかも。
そしてメンタル・ビートを刻んでる。
☆朝日はまぶしい。東の空からの陽光はイエイエな雰囲気を漂わしてる。まるで水玉模様のワンピース姿の彼女が踊ってるように。
国道を走る男がひとり。ハンドルを握る男がひとり。西から東へ。塩水湖を越えて。一級河川を越えて。橋を越えるのには理由があるのさ。ブリッジ・オーバー・トラブルド・ウォーター。彼はマイカー通勤。毎週末には街のライブ・ハウスでヒーローになる彼。そんな彼も月曜日には元に戻るのさ。顔を見られたくないからサングラスでカムフラージュ。東からの陽光はイエイエでまぶしいからサングラス。口笛を吹きながら通勤するのさ。
セルフ・デストラクション・ブルースがくちびるから奏でられている。
☆「もっと女のコらしいカワイイ格好をしなきゃダメじゃないの」ってお母さんからたしなめられる。「なんだ!その髪型は。女みてぇじゃないか!もっと短く切って男らしくしろ!」ってお父さんから小言を言われる。そんなお母さんお父さんだっておばあちゃんおじいちゃんから同んなじこと言われてたんだ。
時代は今まで変わってきたし。これからもおそらく変わるけど。ジェネレイション・ギャップは相も変わらぬ伝統なのだ。年上は生意気な年下がハナに付くのさ。
さぁハタチを過ぎたら親元を離れよう!さぁ旅に出るんだ!お気に入りのカッコで出かけるのさ!辿り着いた場所。そこでは、きっと、ゲスト扱い。歓迎されるはず。
行き先もはっきりせずに旅するボクらはみんなビジターなんだ。
☆『天使』といえばエンジェル。漢字から判断すりゃぁ天の使いか。エンジェルつったら羽が生えてる。実際に見たことはない。絵画や挿し絵で見たことがあるんだ。それってトンボにも蝶にもセミにもないような形。そんな羽。って事はハ虫類じゃぁないって事だな。少なくとも。それってむしろ鳥みたいな羽だったな。背骨を中心線とした線対称な位置にへの字をふたつくっ付けてやがる。パタパタと舞い上がったり着地したり。だけどくちばしが無くって、しかも手足がしっかりとある。って事は鳥類じゃぁないって事だな。確実に。どっちかっつ〜と人間の背中から羽が生えてるって表現するべきさ。演劇や映画やステージでの衣装みたいにね。おまけにその顔は若い女のコの場合がほとんどなんだ。実際に見たことはない。夢で逢った事があるのさ。
ウォーキング・ウィズ・マイ・エンジェル。ボクは彼女と歩いてる。
☆思春期は色恋沙汰が飛び交う。自分自身も。友人関連でも。でも初めて彼女ができた時。これは特別だよね。初デート前「え〜〜〜っと!何を着ていこう?」みたいな。やっぱお気に入りでしょ。自分の勝負衣装着ていかなくっちゃな!「これで決まりだぜ!」っつー奴を着よう。もしかして彼女だって勝負下着着用かもしんないぜ!キャぁーーーーーーっ!エッチぃ〜〜〜っ!
日曜日に初デートを控えた彼。勝負服が決まらず悩みに悩んだ彼は古着屋に出かけたのさ。学生の彼は金もねぇし。ちょっとレトロな方面が彼の得意だったし。音楽でも映画でも文学でも。カルチャー全般においてちょっと昔のイケてる時代がナウなのさ。彼には。過去から未来がやってくるんだ。
古着屋でネル・シャツを選ぶ彼。米国買い付け品がずらりと棒に引っ掛かってる。しばらくして、やっとこさでお気に入りのデザイン柄を見つけた彼。試着する。「ちきしょー!でっけー!」当たり前さ米国人はデカイのさ。
アイ・キャント・ゲット・イット。ボクは買えなかったんだよ。ぐすん。
☆ハノイ・ロックスって、とってもマニアックなバンド。レコードが高額で取り引きされてるとか、そんな意味合いのマニアックではなくてね。バンド自身の姿勢がとってもマニアックだと思う。『ロックン・ロール』ってものに対する熱狂的な姿勢を感じるんだ。曲作りや演奏に限らず。お化粧するとか衣装を着るだとか。そんな“自身の憧れ”に近づくためでもある変身願望。それもロックン・ロールには含まれているんだ。
1983年発表、ハノイ・ロックスのアルバム“BACK TO MYSTERY CITY”。A面3曲目に『MENTAL BEAT』収録。
1982年発表、ハノイ・ロックスのアルバム“SELF DESTRUCTION BLUES”。A面6曲目に『SELF DESTRUCTION BLUES』収録。
1982年発表、ハノイ・ロックスのアルバム“ORIENTAL BEAT”。A面3曲目に『VISITOR』収録。
1981年発表、ハノイ・ロックスのアルバム“BANGKOK SHOCKS SAIGON SHAKES”。B面4曲目に『WALKING WITH MY ANGEL』収録。
1984年発表、ハノイ・ロックスのアルバム“TWO STEPS FROM THE MOVE”。A面3曲目に『I CAN'T GET IT』収録。

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