☆冬の間、国道一号線を東から西へ向かって走る出勤途中で毎朝、海鳥の群れに出くわした。だいたい同んなじ場所で、同んなじ時刻で。北から南へ向かって飛んでいる。「あの群れには先頭がいるんだろうか。いや、いるはずだ。この世の中をふたつに分けるとすれば“指図する側”と“指図される側”になるからな」。気付けば会社に到着。タイムカードの音が鳴り響いてる。
☆海鳥1号が海鳥2号に向かって言った。
「おい、2号!そろそろ出発時刻だで飛翔準備するようにみんなに言ってくれん?」
「オッケー、1号。でも、なんかみんな寒そうにしてるに。やる気あるだかや?飛ぶ気がねぇやつは置いてきゃいいら。ったく最近の若いやつらってのはまったくもって気合いが足りんっ!」
「まぁまぁまぁ。そう取り乱さないで。取りも直さず、とりあえず、飛びましょうや、2号。鳥なんだから」
2号は3号、4号、5号に伝令を飛ばす。それぞれの伝令はさらに下々の者に伝達される。
☆『行進』って言葉には勇ましいイメージがある。少なくともふたり以上でなけりゃぁ『行進』にはならないイメージ。そして“目的地”に向かって進んで行く。隊列を組んで進んでゆく。そんなイメージ。威風堂々か。肩で風を切って歩くのか。暴力映画の主人公気取りか。
☆どんな目的であれ人間は“独り”じゃあ心もとないんで“仲間”を集めるんだろう。徒党を組むのだろう。大きな声で合唱するのだろう。孤独を気取り「最終的には人間ってやつぁ独りなのさ」そんな事を知った風な口でいう奴にかぎって自身のブログのアクセス数を気にしてるのさ。ビートルズの『NOWHERE MAN(ひとりぼっちのあいつ)』に合わせて口笛吹いているのさ。そして、それを誰かに気付いてもらいたいんだ。
☆リーダーは部下を引き連れて進んでゆく。テクテクと歩いてゆく。踏んで踏んで。そしてケモノみち。視界360度の草原に道が1本伸びてゆく。そんな風景。
☆数百年後。草原の道を別のリーダーが別の部下を引き連れて進んでいる。その道は国境になっていた。そんな歴史。
☆マエストロの指揮棒が湾曲する。鼓笛隊が進んでく。マーチン・バンドが進んでく。取締役の指揮棒が空(くう)を切る。サラリーマンが士気を無くす。
☆チャック・ベリーのギターをたくさんの人が真似してる。ボブ・ディランの唄にたくさんの人が共感してる。セックス・ピストルズの存在にたくさんの人が衝撃を受けてる。ロックンロールのマーチが続いてる。
1973年発表、井上陽水のアルバム“氷の世界”。B面3曲目に『桜三月散歩道』収録。90年代初めの頃、このレコードを中古盤屋で500円で買ったのを覚えてる。買った店も覚えてる。だけど買おうと思った動機が思い出せないんだ。当時、ブランキーのベンジーが「影響を受けた」ってインタビューで答えてたのがきっかけだったかもしれないな。
1997年発表、OCEAN COLOUR SCENEのアルバム“MARCHIN' ALREADY”。ポール・ウェラーやオアシスなど同時期の英国音楽が好きだったので購入。家に帰ってレコード廻してぶったまげた「こりゃモッズだ!」。今年こそ来日公演を願う。

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