正面のガラス・ファサードのビルが、劇場や事務所、レストランなどが入っている商業複合ビル、「アクロス福岡」です。
設計者はエミリオ・アンバース氏。
大通りに面したガラスのファサードもきれいですが、このビルの最大の特徴はこの後ろ側、南面する公園に向かって階段状に屋上緑化された屋根面(壁面)が展開していることでしょう。
公園側から見ると、正面にピラミッド状(?)の緑の丘があり、その斜面にガラスのアトリウムが埋め込まれているようにも見えます。
さらにこの斜面は遊歩道のように人が自由に歩いて登ることができます(上の写真中央付近に人が歩いているのが見えるでしょうか。ただし夜間通行不可)。
本当に公園の延長としてビルの外部空間が利用されていることに感銘を受けました(ちょっと大袈裟かな)。
僕が10数年前に福岡へ行ったとき、このビルはまだ完成後間もなくて、屋上緑化の植栽も貧弱なものでしたから、ここまでの強い印象は持っていなかったのですが、今回は目からうろこが落ちたような気がしました。
関係者の努力の成果もあり、建築が育ったのだと思います。
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設計行為をするときに、例えばコンセプトと呼ぶようなものがあるとすると、得てしてそれは建築家(設計者)の頭の中でばかり広がってしまい、絵に描いた餅に終始してしまうことが少なくありません(もちろんそうならないように日々努力してはいるのですが…)。
この「アクロス福岡」の最大のコンセプトは、隣接する公園との一体利用だったのではないでしょうか。
建物本来の目的(プログラム:商業複合施設)を満たした上で、その建物が建つ立地の特性や、都市、そしてそこを利用する人々と直接的に関わる方法を実現させたという点において、コンセプトが実現した極めて優秀な実例と言うことができると思います。
奇抜なデザインに走ることなく、建築のアイデンティティを持ちえたこの建築物に、そして完成後の運営を含め、このプロジェクトに関わった(関わっている)すべての人々に、そしてもちろん建築家エミリオ・アンバース氏に心からの敬意を表します。

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