手触りについての覚書です。
■■■
階段って言うのはデザインのキーになることが間々あります。
さらに階段といえば「もれなく付いてくる(?)」のが手摺です。
まぁ、場合によっては無いこともありますが、合ったほうが良いに決まっていますね。
そこで設計者はそれぞれ意匠を凝らし、カッコ良い階段・手摺をデザインしようと努力しているわけです。
今日は僕自身がそんな設計活動の中で気付いたことの独白(告白?)です。
この記事で使っているドローイングや写真はいずれも僕が設計した建物の階段部分です。
僕が企画から現場管理まで一貫して関わった初めての仕事でした。
この時、階段が割りと目に付く、つまり先に書いたように、意匠的に重要なポイントでもあったのでちょっと変わった事をやってみたいなと一生懸命案をひねり出していました(笑)。
詳細は省きますが、スチール(鉄)のフラットバー(無垢の押出型材)を加工して曲線を生かした手摺です。
この建物は若い人を対象としたマンションでもあったので、コレはコレで良かったのだと思います。
クライアント(事業主)も理解してくださいました。
しかし完成後、僕自身がこの階段を利用し、手摺を握った瞬間「違和感」を感じたのです。
スチールのフラットバーとはいえ、当然、面取りをしているので手に引っかかったり怪我をするようなことはありません。
でもその素材の持つ硬さと冷たさが僕の手から伝わってきました。
素材感を生かしたと言えなくも無いですが、「違和感」は残り続けました。
次に別の建物を設計した時、「違和感」の解消に向けて今度はスチールの丸パイプを手摺に用いました。
完成後、フラットバーの硬いイメージは拭えたような気がしたのですが、「冷たさのイメージ」がやはり「違和感」として残り続けました。
3度目に設計の仕事をした時、金属素材の持つ「シャープさ」のイメージから一歩引いて、木材を丸い断面に加工した手摺をデザインしました。
既製品の木製手摺は野暮ったいので、それより少し細く削り、ブラケット(取り付け材)にも工夫を施して、シャープさがなるべく損なわれないようにしました。
完成した、その木製手摺を握った時、僕の中にくすぶっていた手触りの「違和感」が解消されたことに気付きました。
手摺は、手摺が必要な人のために存在します。
手摺の存在が必要な人が、直接手で握るのが手摺です。
手を摺るようにして使われるのが手摺です。
そのことに気付くために、僕には3件の設計が必要でした。
以降、僕は直接人の手が触れる部分は極力「冷たさ(のイメージ)」を感じないデザインを心がけています。

2