3月19日に行われた竜王戦出場者決定戦の渡辺−藤井戦で、千日手指し直しの末藤井九段が勝ち、決勝トーナメント出場に向け一歩駒を進めた。
一方、敗れた渡辺二冠王は2組へ降級となった。
渡辺二冠王が2組に降級するとは驚きだが、2連敗だけで降級する制度なので、どんなに強い棋士でも降級する可能性があるといえる。
ところで、千日手指し直し局の藤井九段の巧みな歩の使い方が印象に残った。
まずは、57手目の▲5二歩である。
この手は普通の手なので驚かないが、居飛穴攻略に向けての第一歩である(下図)。
それから、10手進み本局で最も印象に残ったのが下図の▲7三歩成である(相手の7三の歩を取った)。
角を取られるが、と金を作ったのである。
さらに4手進み、▲7三歩(下図)。
角損ではあるが、と金がいやらしく迫っていきそうな局面である。
そして、▲5五歩(下図)。
振り飛車側の玉が鉄壁なので、角損でも成立している。
そして、最後にとどめの▲4三歩(下図)。
もはや、この攻めは振りほどけない。
この▲4三歩で、渡辺二冠王が投了した。
歩の力だけでいとも簡単に、居飛車穴熊を攻略してしまった。
藤井九段の芸術的な指し回しが印象に残る将棋だった。

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