第1局、第3局についで第5局も横歩取りの将棋だった。
羽生三冠王は今までのタイトル戦ではいろんな戦型を指していたが、今期の竜王戦では後手番では横歩取りに決めているようだ。
羽生三冠王にとって横歩取りは最も自信のある戦型なのだろう。
羽生三冠王にとって今までのタイトル戦ではストレート勝ちが多く、タイトル戦ほどの大舞台でも余裕があったのだと思う。
だからこそどのような戦型でも勝算があり、いろんな戦型を披露していたのだと思う。
しかし、今期の竜王戦だけは相手が6連覇中の渡辺竜王ということもあり、また他のプロ棋士との対戦のように圧倒的な勝率を誇っている訳でもなく、そこで最も自信のある戦型をぶつけてきているのだと思う。
要するに本気で勝ちにきているということだろう。
第3局と同様中盤は渡辺竜王の優勢だと思ったが、終盤の羽生三冠王の凄まじい追い込みは並々ならぬものだったと思う。
最終盤は渡辺竜王が勝ちにくい展開になっていたような気がする。
我々観戦している人間には分からないが、対局している当事者には羽生三冠王の執念が伝わり、当事者にしか感じられない恐怖のようなものを感じていたに違いない。
まして2連勝後の2連敗という悪い流れ、また第3局・第4局の悪い将棋の流れを考えると、普通の人間ならそのまま押し切られていたことだろう。
そのような状況の中、渡辺竜王はよく勝ち切ったと思う。
この1勝は物凄く大きな1勝だ。
第3局・第4局の悪い流れを完全に断ち切る大きな1勝だ。
渡辺竜王の卓越した精神力がこの勝利をもたらしたのだろう。
次の第6局も素晴らしい将棋が見られることは間違いない。
勝利の女神がどちらに微笑むのだろうか?

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