車を預けている、ナコンサワン市内の自称ルアービルダー「サンダル親父」から電話があり、「近所の堤防が決壊したらうちも浸かるので、いざというとき車を移動させなきゃならないがカギがない」とのこと。
そういえば車のキー、もって帰ってきてるんだった・・・。
親父のうちはチャオプラヤ河岸から1キロほどしか離れていない。放水が開始された北部ターク県のプミポンダムの水が明日あさってあたりナコンサワンに到着すると本当にヤバいかもしれない。
というわけで今日は、ボートでチャオプラヤ支流ナン川を下って本流に住むサンダル親父に車のキーを渡す、というミッションの日に急遽なっちゃったわけですが、
本当はパパッと済ませて、帰りにブンボラで釣りでもしなきゃガソリンがもったいないな、とタックル1式持っていってたんですが、結局それどころじゃなかった。
いや疲れました、ちょっとした冒険気分・・・。
それでは、全然役に立たない「水の上からダイレクトなチャオプラヤ水位情報」お伝えします。
ブンボラペッ、広すぎてもはや淡水の海。
ぼくのボートは現在、ナン川沿いの家からいうと線路を越えたブンボラペッ湖側に係留していて、ナコンサワン市内方面に行くには、どこかで線路を越えて川側に出ないといけない。
無理してボートを引きずればここからでも超えられるのだろうけど今日はブンボラペ釣りポイントの偵察もかねて最初はしばらくブンボラ沿いに走り、5,6キロ先の線路がもっとも冠水しているエリアで川側に渡ろうと思った。
しばらく走り水産局を越え、3D映画の水族館。この公園まわり「だけ」は県の洪水対策が驚くほど早かった。9月のはじめにはガンガンに土盛ってたからね。
周辺の村はここら辺でもっとも被害の大きい完全水没地域なのに、なんとこの施設だけ建物内にまったく水が入ってきていない。
もう少し地域住民のことも考えてあげればやることは他にいっぱいあったろうに・・と思わずにはいられない。
そしてこの辺りが線路冠水もやはり一番ひどいところなので川側に渡るチャンス、と線路のほうにボートを走らすが、ホテイアオイが225号線道路上にびっしり詰まっていて線路までいけない・・・。
そのまま川側に渡れないままさらに進み、先月ヒデちゃんとボール撃ちしたあたりにホテイアオイの切れ目を見つけ、小さな集落の中に突っ込んでいくと親切なオバチャンが丁寧に線路に通じるルートを教えてくれた。ちなみに冠水住宅の2階から。
オバチャンは簡単に渡れると言ってたけど(これは渡った後で撮った画像ですが)、ブンボラ側から川側に線路上が「瀬」になって流れ落ちててけっこうスリリングなんですけど・・・。
釣りしているあんちゃんがいたので、これ渡れるかなぁ?、と大き目の声でつぶやくと、「ダ〜イダ〜イ・いけるいける」とのこと。
で、ちょっとドキドキしながら川下りカヤック気分で流されてみるとレールで船底が引っかかってクルンと1回転しちゃったけど意外とあっさり線路超え完了。
そして次に待ち構える障害物は、これが一番怖い、場合によってはシャレにならない結末になっちゃう、冠水電線。タイの洪水関連死者の多くが感電死だという話もよく聞きます。
街灯も浸かり
蜘蛛の巣のように張り巡らされたトラップをくぐりぬけ(後部のペラシャフトが電線にひっかりそうで怖い。流れあるし)、水没民家の集落を抜けると、ようやく川に出た。
さまよったあげく、どの辺に出てきたのか最初まったく場所がわからなかったが、どうやらナン川とピン川の合流点。つまりチャオプラヤ川の出発点であり、ナコンサワン市内のすぐ手前のようだ。
川から見るナコンサワン市街はすでに沈んでるかのようにも・・・。
しかし実は2重壁に積まれた土砂と土嚢とフル稼働の排水ポンプでなんとか冠水を免れています。
背後の山頂には(いちおう)有名な観光地ワット・キリウォンも。
大型ポンプ排水。しかしこのチャオプラヤの水量。やっぱりふだんと比べるとビビる迫力。
幅は乾期の2倍(以上?)。前方に見えるはアジアハイウェーに架かるディチャー橋。
並行しているアーチ式の旧橋は大戦中に日本軍が作ったものだが、低いなぁ・・・。くぐれるのか?
なんとかいけそう・・・でも、流れが、すごい・・・。とくに橋げたを越えた後のウネリはちょっと怖いくらいの強い流れでした。
そしてこのディチャー橋を超えてしばらく行ったところの水上レストランをサンダル親父との待ち合わせ予定場所にしていたのですが、ちょうど川がカーブしていてしかも流れの当たるアウトベンド・・・。ものすごい流速でビビってエンジン切ってレストランに近づこうとしたのがまずかった。手漕ぎオールでは制御不能で、思いっきり流れのままにレストラン鉄柱に激突。
瞬間、転覆間違い無しと腹をくくったが、運良く真正面から突入したため転覆は免れた・・・しかし船の前方先端部分、本体木材がバッシリ割れ、かなり痛い破損・・・。
やっぱり今年の冬は金かかりそうだ、なんだかんだ・・・とかなりブルーになるがそうこうしているうちにどんどん流れの激しいカーブに入っていき、あわててエンジン始動。
このウネリの中で転覆したら・・・マジで命の危険を感じてしまう。
Uターンして、流れのすこしでも緩い岸際を探してさまよっていると、運良く近くの市場に夕食のおかずを買いに来ていた「サンダル息子の弟」が道路上からぼくを発見、声を掛けてくれた。ラッキー、た、助かった・・・。
サンダル弟に車のキーを託し、本日のメインミッションをなんとか遂行できた安堵感と、正直心身共にとっても疲れたのとで、電線トラップと線路チャラ瀬超えを再度味わう精神的ゆとりもなく、やっぱりブンボラでの釣りはあきらめておとなしく川側に沿って帰ろう、せっかくタックル持ってきたけど・・・という釣師的には非常に軟弱な結論に。
普段の水位なら当然ナン川に沿って帰るところですが進路上に冠水してしまってくぐれない橋がひとつあるため、ナコンサワン市内を横目にもうひとつの支流ピン川を少し遡上し、最近できた橋の国道沿いに完全水没の湿地帯を横切る直線コース、大洪水ならではの、1番イージーかつ効率の良い定番ルートを往路コースに選び、無事帰宅しました。
ピン川に架かる新橋、ディチャー橋より橋げた低い。というかすでに橋の機能は失い、避難所化しているけど、くくれるのかな?
これもなんとかいけそう!
しかしカギ渡すだけで往復4時間近くかかり今日も夕暮れ。
毎日こんなことして遊んでていいのか、洪水被災中?のオレ・・・。

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