タイの淡水魚標本採集のお手伝いでタイ北部に行ってきました。
北部といっても前回のメコン川水系ではなく、今回はタイの中では少し特殊ともいえるミャンマーとの国境を流れるサルウィン川水系。
生息する魚もインド、ネパール、バングラデシュといった中央アジア方面の魚種系統が多いのが特徴、らしい。
主だったところでは、まずマシール、サハール系。そしてバガリウス系、コブラスネークヘッド、ワラゴアッツーなど。
とある町の川魚料理屋でトムヤムを頼むとその具材はなんと「プラーコム」といわれるマシール系の魚。オーナーのオヤジいわくタイのマシール系亜種としては有名な「プラープロワン」とも「プラーウェイン」とも違う第3の種だという。
そのプラーコム、数年前市場でまるごと買ったという20キロ級のウロコをわざわざ出してきて見せてくれた。
そしてオヤジはこの町の生鮮市場にいけば、20キロクラスはさすがになかなか水揚げされないとしてもメートルクラスのプラーコムなら普通に並んでいるはずだと言った。ただし朝の4時には市場に行かなければすぐに売切れてしまうほどの人気食材だ、とも言った。
そして翌朝、気合で早起きして市場へ向かうと・・・
魚屋のオバチャンが、魚ではなくなにか他のものを売っていて、それに人が集まっていて
その人気商品はナニ?近づいてじっくり見てみると・・・・
魚屋がセミを売っとる・・・ww
羽をちぎり、丸揚げにしてから頂くらしい。おそらくそうとうな珍味、というか、味わうような「身」なんてあるのか、セミって?
で、魚はどうしたの?メーター級のプラーコムは?
とオバチャンに聞くと、もう少しで来るから少し待て、という。
近くのコーヒー屋台で10分ほど待っていると、オバチャンのダンナらしきオッサンがズタ袋をかかえてやってきた。
袋の中身は50センチ級のバガリウス数匹、そしてプラーコムの切り身。この切り身とて、どうつなぎ合わせてみてもメートル級にはとても見えない。
しょぼすぎる・・・・タイ全国の早朝生鮮市場の魚コーナーの基準値でみると「下」クラスのしょぼさである。
レストランのオッサン、サービストークで盛り上げすぎやなぁ・・・。
眠い目をこすりつつホテルに戻り、まだ薄暗い中、部屋の目の前を流れる川で朝マズメの釣りを試みる。
食った!
対岸浅瀬から流芯にかかる境目でギル用の極小ペンシルベイトに何者かがアタックしてくるがノラず、そして後が続かない。
これでどうだ!
食った!
おぉっ激しいチェイス!そしてもう一度ゴボッ!
一撃です、さっきのセミ。やっぱりエサは現地調達にかぎるww
どうです、このカッコいい口。パッと見、日本のハスそのものだけど、ぼくはハスを釣ったことがなかったので非常にうれしかったです。
初めて見る魚だったので、袋にキープした実物をホテルのオネーチャンに見せ、この魚はなんていう魚?と聞いてみた。
魚を凝視、数秒う〜んとうなってニッコリ。
「プラーメナーム(川の魚)よ」
ナコンサワンに帰宅してから図鑑で見たり、ヨメさんに聞くと、プラーアイアオといってナン川やチャオプラヤ川にもいるらしい、が、いままで10年、川でも市場でも食卓でも見なかったんだから、昔はいたけど中部地域じゃ絶滅?
そして現地の釣具屋には1〜2キロクラスの釣果写真もあり、バーミーズトラウトとも呼ばれているらしく、アイアオとは似て非なる亜種かもしれないが、タイ北部にはまだまだ面白そうな未知の対象魚がいることはたしかなのだ。
しかも水面を流れるセミにあれほどの激アタック。タイとは思えないクリアーウォーターに連続するシャローエリア。
そう、これをフライフィッシングで狙わないで、なにがコンプリートアングラー(完全なる釣り人。釣魚大全より)だ。
行くよ、北部へ。ラストフロンティア。

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