2003年の思い出は、またいつか語るとします。写真は2004年7月5日、ナポリの近くアヴェルサにてヨーロッパ・チマローザ・フェスティヴァルへの参加公演「奥様女中」のものです。セルピーナは嶋村友美。演出はサンティーニ、ヴェスポーネはヴィーゴ。そして指揮はマリーノ・バラテッロ。もちろんウベルトは私。オケはかつてのトリノのRAIで弾いていた連中によるアヴェルサ・オーケストラ「ドメニコ・チマローザ」。寄せ集めだと思うのですが、とても流麗でした。アンサンブルというより、皆がいっせいに思い思いに弾いている感じ。
この時はいわゆる南イタリアの「いい加減さ」を思い知りました。道を歩いていると引ったくりの子供が私の脇を自転車で走り抜けていく。オペラの稽古開始が三時間位平気で遅れる。稽古中、演技しつつ歌っている私の目の前をどこかのおばあさんが普通に歩いて横切る。照明のタワーが轟音と共にぶっ倒れる。本番中、袖からスタッフが顔出して舞台を覗いている。オペラの本番途中に司会のお姉さんが、もう終わったと勘違いしてしゃべり始める・・・
しかし、モッツァレッラ・チーズは信じられない程うまかったなあ。それになんと言ったっけ、辛口の素晴らしい発泡ワイン…ああ、それにナポリの街、そして海!
ただ、この公演後に、私は不覚にも高熱を出し、ヴェローナ近郊で予定していたオペラ出演を(わがオペラ人生ではじめて)キャンセルしたのでした。…ああ、痛恨。