今月の2日、9日の金曜日に、社会保障審議会 医療部会がありました。
社会保障制度改革国民会議で議論されたことを踏まえての議論でした。
マスメディアでも、国民会議でどのような議論がなされたか報道されていますが、
メディアが取り上げるのは、もっぱら
お金のことなんだなあと思います。
もちろん、それが一番生活に直結する問題ですから、そうなるのでしょうが、
医療部会で重点的に話し合われたのはお金のことだけではありません。
今回の医療部会で、委員の方々の話が集中したことの一つが
病院の医療機能の中に「亜急性期」をどう位置づけるのか
というお話でした。
看護師の配置基準で7対1,10対1,13対1といったランクがあります。
これは看護師1人あたりに直した入院患者数ですから、7対1が最も手厚い看護を受けられることになります。
この基準を満たすためには看護師をたくさん雇わなくてはなりません。
そして、この基準を満たす医療機関は、入院費などの診療報酬の点数が高くなるため
大きな病院ほど看護師をたくさん雇用し、結果として、当初の予想よりも7対1看護をする急性期病院ができました。
ところが、その急性期で治療を受けた患者さんが、容体が安定した後に移る、転院先が不足しています。
ここが「亜急性期」「回復期」と言われる病院なのですが、
ここをどうやって増やそうか、という議論を医療部会で行いました。
2日の部会では、現在の医療機能をどのように評価するのかといった議論でした。
重要な視点が欠けていると思いますが、
実際に、急性期を過ぎた患者さんが退院できない、転院できないのは、医療だけの問題ではなく、生活も含めたサポートが必要なのに受けられないからです。
急性期の医療を支えるためには、介護との連携どころか一体化が必要だと思います。
医療機能を見るときには、在宅医療や介護までをふまえて、それぞれの地域の実態を把握する必要がありますので、
在宅の医療資源・介護資源をきちんと視野に入れてほしい、と発言をいたしました。
9日の部会では
日本医師会と四病院団体協議会から出された提言の中に、かかりつけ医の定義と機能について記載があったのですが、
「定義」
何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を照会でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。
とあり、
かかりつけ医の機能についての記載も、医師が医師を評価する、いわゆるプロフェッショナルから見た機能が書かれています。
実際に、患者が自分のかかりつけ医を選ぶときの基準としてはそのまま適用できません。
国民会議の報告書に
医療改革は、提供側と利用者側が一体となって実現されるものである。
患者のニーズに見合った医療を提供するためには、医療機関に対する資源配分に濃淡をつけざるをえず、しかし、そこで構築される新しい提供体制は、利用者である患者が大病院、重装備病院への選好を今の形で続けたままでは機能しない。
さらにこれまで、ともすれば「いつでも、好きなところで」と極めて広く解釈されることもあったフリーアクセスを、今や疲弊おびただしい医療現場を守るためにも「必要な時に必要な医療にアクセスできる」という意味に理解していく必要がある。
と、医療を受ける側の理解がなければ、この医療改革は成功しないと書かれています。
ところが、かかりつけ医を選ぶときの基準、
いつが必要な時で、なにが必要な医療なのか
という具体的な情報が、医療を受ける側に伝えられていません。
行政も、医療側も、この点については「広報」「教育」というしっかりした柱を立てて検討をしていかないと、
以心伝心のようなわけにはいかず、
現場での医療者と患者のトラブルが解消されません。
9日の会議では、この点を発言したのですが、
医療法の一部改正を検討する中での各項目立ての中で議論をする方向になりそうで、
国民の義務や、提供側の「伝える義務」についてはこのままいくとあいまいなままになりそうです。
かかりつけ医をはじめ、医療機関によって機能が異なり、役目が違うことなどを国民が理解し、
医療者と国民が一緒に医療を支えていかなくては、日本の医療は立ち行かないところまで来ていると思います。
医療制度改革が、本当に実効性のあるものになり、
医療を受ける側も納得できるものになるためには、
非常に大切な点だと思うので、
これからも会議のたびに繰り返しお話をしていきたいと思っています。
また、
お金の話に戻して言えば
医療体制を整えるためには、力を入れたい医療の診療報酬点数を上げれば、
医療機関にとっては収入アップになるのですから
そちらに体制を作っていくことができます。
半面、点数が上がるということは、患者の窓口負担が増えるわけですから
患者はそちらの医療を避けるようになります。
急性期の病院に入院した場合と、在宅で医療・介護を受けた場合の費用負担について
ある委員から発言がありましたが、
急性期の病院に入院している方が、家族の負担は経済的にも肉体・精神的にも軽いのが現実です。
これでは家族はなかなか在宅医療に踏み切れないでしょう。
医療を提供する側は、「こうしたほうがお得ですよ」といった制度を作っていくことを、もっと真剣に考えなければならないでしょう。

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