旭中央病院、救急を制限/内科医減が深刻
県東部の中核病院、国保旭中央病院が4月から、救急の受け入れを制限している。
内科医が大幅に減ったことが原因で、外来の診療にも影響を及ぼし始めている。
同病院は受診者数を減らすため、「病状が安定したら近くの医院で受診を」と呼び掛けている。
同病院によると、病院全体の常勤医師数(研修医を含む)は、昨年度の253人から239人に減った。
深刻なのは、59人から50人になった内科。
救急現場で働き盛りとなる免許取得6年目前後の医師が抜け、補充できなかった。
救急にあてる医師が足りないため、脳卒中患者については、東金市や山武市、茨城県からの救急車の受け入れ制限を決め、4月から実施している。
同病院で年間に受け入れる救急車(約6千台)のうち、両市の患者数は12%、茨城県からは11%になる。
両市の患者は原則、千葉市内の病院に搬送されるという。
同病院は
「医師の補充を急いでいるが、短期的な解決はできない。
このままでは圏域の医療を守れなくなるので制限せざるをえなかった」
という。
内科の中の一部の診療科では、入院や外来診療にも影響が出かねない状況だ。
呼吸器内科は現在2人の専門医が外来診療をしているが、うち1人は今夏に退職を決めている。
同病院の肺がん患者の新規患者数は県内で3番目に多く、医師1人あたりでは最多。
すでに新規患者の一部は千葉市内の病院を紹介している。
新人医師からは、定数を大幅に上回る臨床研修の希望がある。
だが
「指導役の中堅医師が少なくなれば、研修希望も減る。
そうなると病院自体の魅力が下がり、さらに人が減る悪循環になる」(指導医の1人)
という懸念も出ている。
同病院は、生命に危険が及ぶような重篤な患者を扱う3次救急を担う。
入院が必要なけがや病気への対応が本来の役割だが、軽症者の対応にも追われている。
1日の外来患者数はここ数年、3100〜3250人に上る。
患者数を減らすため、紹介状がない受診を後回しにしたり、薬だけの通院をなくそうと処方箋(・・せん)の日数を延ばしたりした。
だが、地域の高齢化率の上昇などもあり、効果は上がっていない。
同病院広報部は
「どうしてもここで診てほしい、という人を拒めない」
と悩む。
同病院に負担がかかる一因は、県東部の医療機関の縮小だ。
隣接する銚子市の市立総合病院は2008年9月、医師不足や市の財政難などを理由に休止。
10年5月に診療を再開したものの、手術や入院は大幅に制限されたままだ。
本来、山武市や東金市の保健医療圏域は、旭市がある香取海匝圏域とは別。
しかし、現在両市では救急機能がある基幹病院が弱体化しており、そちらからの患者流入も止まらない。
一方、基幹病院としての義務は高まる一方だ。
09年からは県の委託で、救急車の搬送先が見つからない場合、必ず受け入れる役目を負った。
当初の年間受け入れ件数は200台だったが昨年は600台になった。
同病院の伊良部徳次副院長は
「患者さんには申し訳ないが、安定した状態になった方は地域の医療機関への通院に切り替え、緊急性が高い方を優先させてもらいたい」
と話す。
(重政紀元 2012.4.22 朝日新聞より)

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