広がる無料低額診療
今月から17施設に拡大
実施機関「生活再建支えたい」
医療機関が経済的に苦しい人の医療費を無料にしたり、減額したりする「無料低額診療事業」が広がっている。
2月から県内の実施施設は6から17になった。
困窮から受診を控え、悪化するケースも出ているだけに、実施施設の担当者は「安心して受診してもらいたい」と呼び掛けている。
無料低額診療時事業は社会福祉法と法人税法に基づく福祉制度で、実施を届け出た医療機関で行われている。
希望者の申請を受けた医療機関が収入などを審査した上で、世帯医療費の減免額を決める。
減免した医療費はすべて医療機関の持ち出しになる。
県健康福祉指導課によると、県内の医療機関で同事業を実施してきたのは6施設。
2月から実施した県民主医療機関連合会(千葉民医連)の医療機関11施設を加えると計17施設になる。
減免額は医療機関によって異なる。
千葉民医連の場合、
無料=無保険で生活困窮者
自己負担金の全額免除=1ヶ月の収入が生活保護基準の120%未満
同5割減額=同120%〜140%未満
同3割減額=同140%〜150%未満
としている。
同事業は1951年に始まり、近年の貧困問題の拡大とともに再評価されいてる。
代表的な医療費の減額措置として生活保護の「医療扶助」があるが、条件は厳しく、適用できないケースが珍しくないためだ。
糖尿病による低血糖の既往症がある県西部の30代男性も医療扶助は認められなかった。
派遣労働で収入は生活保護と同レベルなのに、薬代だけで毎月最低1万5千円の自己負担がかかる。
国民健康保険料も滞納しており、通院先に立て替えてもらっている医療費は数十万円という。
ある病院のケースワーカーは
「治療費がない、と通院しなくなるケースは少なくない。
仕事を休んだら生活が立ち行かなくなるため、倒れるぎりぎりまで働き、受診したときは手遅れの状態になっている人も出ている」
と訴える。
国保料の滞納も増え続けている。
社会保障推進県協議会の調べでは、2009年の県内滞納者は、国保世帯の25%を超える。
うち7割は年収200万円以下だ。
千葉民医連の医療機関の場合、同事業を適用できる期間は最大6ヶ月。
この期間に治療と生活再建が難しいようなら、生活保護など別の福祉制度の活用ができるように自治体と協議していくという。
千葉民医連の秋元稔事務局長は
「困窮者の医療支援は本来、自治体病院の役割だが、ほとんど機能していない。
(同事業の拡大で)受診抑制をなくし、患者の生活再建につなげたい。
まずは最寄の実施施設に相談してほしい」
と話す。
(重政紀元)
(2011年2月26日 朝日新聞より)
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