「民間委託でも赤字 高知の基幹自治体病院統合-2」
新聞記事より
新聞記事よりアップします。
このすぐ下のスレッド「民間委託でも赤字 高知の基幹自治体病院統合-1」の続きです。
(以下、新聞記事)
人件費や薬・器具代が圧迫 ノウハウ不足 誤算
高知医療センターは、運営に民間の資金やノウハウを活用する「PFI」を本格導入した。
建物だけで220億円かかった建設費の調達と、経営効率化が目的だった。
だが、収支は赤字続きだ。
初年度の05年度は約17億5千万円、06年度は約22億3千万円の赤字。
07年度予算も、約16億7千間年の赤字を見込んでいる。
病院の運営主体である高知県・高知市病院企業団は、オリックスが代表企業をつとめる特定目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ」と02年に30年の事業契約を結んだ。
約2132億円で病院建設のほか清掃や給食、診療報酬請求事務、薬や医療材料の調達などを委託する内容で、自治体が直接事業をするより約55億円の経費を削減できると見込んだ。
しかし、病院経営の現実は厳しい。
医師や看護師らの給与費が05年度の医業収益に占めた割合は59.6%で、500床以上の全国の公立一般病院の平均50・6%を上回った。
薬や器具などの材料費も医業収益の30.9%を占め、当初目標(23.4%)を金額にして約8億円超えた。
このSPCには病院運営のノウハウが不足していた。
実際の業務は医療事務などの専門業者に下請けに出しているが、その管理の甘さが高コストの要因として指摘されている。
SPCは06年度の「マネジメント料」約2億4千万円の請求を辞退せざるをえなかった。
08年度からは病院建設費の借金返済も始まり、新たに年約8億円が必要になる。
こうした現状に、高知県で初の地域医療支援病院に認定された近森病院の近森正行院長は
「人件費を減らさないと経営は改善しない。
医療機能の絞り込みや病床数の大幅削減なども必要だ」と警鐘を鳴らす。
これに対して高知県の畠中伸介・健康副支部長は
「PFIだからこそ設備を充実できた。赤字は想定の範囲」
とし、財政支援を続けるという。
(解説「読むナビ」)
先進例の教訓生かそう
病院の建設・運営にPFIを導入する例は全国に広がっていて、内閣府によると11件ある。
うち8件は計画・建設中だが、いずれも地域の基幹病院で、高度医療を実現する資金や知恵を民間に期待して、PFIを導入している。
高知医療センターは、その先駆けだ。
へき地の救急患者も重症患者も受け入れる「最後のとりで」をつくるためPFIを選んだが、発注者の県・市も、受けるSPCも手探りで、それが管理運営の甘さにつながった。
大事なのは、後に続く自治体や大学病院がその経験をどう生かすかだ。
東京都は多摩広域基幹病院・小児総合医療センター(ともに仮称)をPFI方式で10年に開院させる。
担当者は何度も高知を訪ね、運営を委託する事業者には、経営能力や医療機器や薬を安く調達する能力などが重要だと判断。
入札価格よりも能力評価を重視して企業グループを選定した。
手厚い医療を効率的にと、住民は自治体病院に期待する。
自治体病院のマネジメント能力がますます問われている。
(2007年5月5日 朝日新聞 「医を創る」)

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