”不安の時代を生き抜く逆転の発想”というメッセージがついた姜尚中著『悩む力』を読んだ。
冒頭著者は『悩む力』にこそ、生きる意味への意志が宿っていると切り出した。今まで抱いていた悩むという行為が、グレートーンから澄んだ力強いいブルーに一変した瞬間だ。
それならば、どのようにして、悩みながら生きていくのか、悩みを乗り越えていくのか・・・・
日本の文豪・夏目漱石とイギリスの社会学者・マックス・ウェバー、海を隔て”今”と似通った時代を生きた二人はいかに『苦悩する人間』であったのかを個人、自我、自由、金、知性、働くことの意味、人生の意味、死ぬことの意味、愛することの意味などとテーマ別に著書を抜粋しながら次々に氏の解釈で持論を構築していく。
しかし、私は随所に出てくる婉曲した言い回し、あくまで東大教授の椅子に腰掛けながら語る目線とにいささか反発を感じ、姜氏のあの控えめで少し低い声音と物静かな居住まいとは異質な感じがし、最後までなじめなかった。
だが、姜氏は結論する。”今”の時代にそぐわない言葉だが、あえて漱石の『まじめ』という言葉に注目し『まじめに悩み、まじめに他者と向かい合う。そこに何らかの突破口があるのではないでしょうか。とにかく自我の悩みの底を掘って掘って掘り進んでいけば、その先にある、他者と出会える場所までたどり着けると思う。』もっと悩む力を持てと言う、それが真の強さを掴み取る生き方だと・・・・。


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