拙著「
カラー版 一度は乗りたい絶景路線」(平凡社新書)ですが、好評に付き増刷となりました。毎日新聞朝刊に書評が載ったのが効いたようです。ご購読くださった皆様、ありがとうございました。
さて、
SL人吉の話(1)の続きです。

人吉を出発した熊本行き「SL人吉」は優雅に走っていきます。外は生憎の雨でしたが、車内は快適です。水戸岡ワールド全開のインテリアは洒落ています。ショーケースが置かれているところなぞ、彼がデザインした
和歌山電鉄の「おもちゃ電車」を彷彿とさせます。


さらには「SL文庫」というミニ図書室もありました。汽車の絵本、鉄道写真集などが集められています。残念ながら拙著はありませんでした。

たまたま乗り合わせた養護学校の生徒と親のご一行様の女性添乗員さんが、ソファーに座って書類に目を通していましたが、乗客は車窓の景色を眺めたほうがいいと思います。肥薩線は絶景路線ですからね。
午前に立ち寄った一勝地に停車しましたが、雨が激しくて降りてみる気になりません。窓からホームを見ていたら、午前に話をした村の観光協会の人と目が合い、手を振ってくれました。
球磨川沿いに悲しげな甲高い汽笛を鳴らしながら進むハチロク。次の白石で停車したところで、車内放送がありました。
「雨量が基準数値を超えたため、運行をしばらく見合わせます」
窓外を見ると、土砂降りです。この先の球磨川第一橋梁は水かさが増して、危ないのでしょうか?
「かなり長時間にわたって停車することになりそうです」と二回目の放送が入りました。「復旧の見込みはたっておりません」
これは大変なことです。少しでも長く乗っていられてラッキーなんて、気楽な気分ではなくなってきました。
先ほどの添乗員さんは、携帯でさかんに外部とやりとりをしています。1時間以上たったところで、養護学校の団体は、バスが急遽迎えに来ることに決定。さらに小一時間たって、立ち往生して1時間半以上たったころ、バスが到着して、ご一行様は列車から降りていきました。乗客が半数になった車内。その夜は熊本に泊まる予定だったので、私は、それほど慌てていません。
その頃から、雨は小降りになり、やがて止んだようです。
「雨は上がりましたが、線路の点検が終わるまでは発車できませんので、もうしばらくお待ちください」

こうなったら撮影タイムです。立ち往生中のSL列車の撮影は、もちろんのこと、木造駅舎も撮影しました。

うんざりした表情の一般客とは対照的にテツはカメラ片手に元気に動き回っていました。災いを転じて福となす・・・。そうこうするうちに、珍しい車両が人吉方面からやってきました。

線路点検用の車両ですが、自転車みたいに一方にしか走れないのではなく、前後どちらへでも走れるのが鉄道車両たるゆえんです。これも格好の被写体になってしまいましたが、このおかげで列車は無事運転再開できました。
結局、2時間遅れで熊本着。疲れたけれど、珍しい体験ができました。

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