YETI ULTIMATEのシートポストが固着してしまい、シートポスト破壊計画が発動されました。
計画はすぐに実行に移されましたが、困難を極めました。
そこでシートポスト溶解計画に切り替えとなりました。
その顛末を記しておきます。
なお、
「私もやってみよう」などとは考えないほうがよいとお伝えしておきます。m(_ _)m
シートポスト破壊計画
○2009.10.05
・シートポストを切断しました。ちょっと早まった感ありですorz。切らなければしばらく乗れたのにと思います。しかし放置しておいてもいずれは作業しなくちゃならないですし、ならばそれは今しかないと思いました。
・切断してみたら、奥はかなり深かったです。
・スポークを差し込んで測ってみると、フレームから20cmは入っています(涙)。シートポスト長さ25cmをまるまる切らずに使っていたようです。我ながらこの無駄はどうかと。
・10cmは切ってもよかったんじゃないか。15cmでも良かったかも。そしたら固着せずに済んだのではないでしょうかか?orz
・内部の切削は、道具が揃っていないので明日調達予定です。
○2009.10.06
・ノコギリをコメリで調達しました。ノコギリ刃にグリップをつけるタイプのもので、狭いところにも差し込めます。刃をスライドさせれば20cm先も届くでしょう。
・切削開始。ノコギリで少しずつ切れ目を入れていきます。
・シンクロスのポストは内側の断面が楕円になっており、薄いところが2mm厚、厚いところは4mm厚あるので、薄いところに切れめを入れます。
・シートチューブと平行に切っていくのはかなり難しく、またアルミ(シートポスト)と鉄(フレーム)の境目も良く分かりません。電動とかエア式とかならもう少し効率がよいでしょうが、そんな設備はありません。不安を抱えたまま作業は続きます。
・3時間ほど格闘して、2本の溝を作れましたが、いいとこ奥行き5cm程度です。
・それでも少しは剥がせるかと思い、ケガキ針を打ち込むと確かに切れ目の部分は浮いてきました。ちゃんと奥まで切れていれば、6条くらい切れ目を入れれば剥がせそうです。
・問題は、6条もちゃんと切れ目が奥まで届くのに何日かかるかということですorz。
・今日はここでおしまいです。
○2009.10.07
・会社からパイプレンチを借りてきたので、ちょっと回してみました。
・やはりびくともしません。下3/4がまだ切れていないので当たり前といえば当たり前ですね。
・パイプ上端はクランプしたため、若干つぶれました。おかけで一部浮いたので556を差しておきました。
・今日はここまでです。
もっと効率的というか、楽な方法はないかと考えました。
今の方法だと、
・切れ目を入れる。
→切れ目沿いにケガキ針を打つ。
→部材の内側から剥がす。
の繰り返しになる模様。奥深くなるとこれを続けられるか心配です。
シートポスト溶解計画
・そこで強アルカリを使う方法を考えました。
・水酸化ナトリウムを使えば、アルミは溶けますが鉄は溶けません。
・幸い、ULTIMATEはシートチューブ下端のBB側に穴があいておらず、シートチューブは独立しています。(かなり珍しいと思います。)
・フレーム内に水酸化ナトリウムを浸しておけば、数日(?)でアルミは溶けてなくなるはず。これはなかないいい方法かも。
○2009.10.9
・水酸化ナトリウムを入手して作業に掛かりました。(薬局ではハンコが必要です。)
・体に触れると皮膚を溶かすので、長袖長ズボン、ゴーグル着用など、完全防護をします。
・手袋はニトリルゴム手袋でOKです。
・フレームはポリエチレンの袋で完全ラッピングしました。
・道具として、100円ショップでステンレスの器具とポリエチレンのボトルを調達してきました。(ステンレスもポリエチレンもアルカリには溶けません。)
・10%程度の濃度になるよう、計量して水に溶かします。発熱がすごいことになっています。
・発熱が収まったところでシートチューブに流し込みます。とても緊張します。
・換気扇を回しつつ、さらに手元では扇風機を回しています。
・シューシュー言い出しました。おそらく水素が発生しているはずです。
・反応には時間が掛かりそうなので、そのまま放置することにしました。
○2009.10.10
・水素はシューシューと音を立てて発生しているようですが、見た感じ、まだあまり変化はありません。濃度が薄いのでしょうか。
・アルマイトはアルカリ濃度が低いと溶かせないらしいので、濃度を上げることにしました。
・水酸化ナトリウムを追加し、濃度を18%程度まで上げました。どんどん溶けるのを期待します。
○2009.10.11
・思ったよりも変化に乏しいのでちょっと不安になり、見えるところで実験することを考えました。
・計量カップに液を用意し、そこにエンドキャップを入れました。
・しばらくすると泡が出てきました。この状態はシートポストとも同じです。
・エンドキャップがどうなっていくのか、それを観察するのが狙いです。いずれ溶けてくれるのでしょうか。
○2009.10.12
・夜。一日放置しておいたので、どうなったでしょうか。
・白く乾燥したものが作業場のあちこちに見られます。とくに軽量カップのものは真っ白で、どうも水酸化アルミニウムのようです。
・NaOHが少ないと白く沈殿するということなので、乾燥したとともにNaOHが不足だったと思います。
・エンドキャップは溶けきらず、わずかに残っていました。
→NaOH水溶液を足して攪拌すると、きれいさっぱり溶けてしまいました。
・液は白銀色の濁った液となりました。浮遊している固形物は酸化アルミでしょう。
これで少なくともアルミの地金ならば、少しずつ溶けることが確認できました。
・シートポスト内も若干液面が下がったようなので補充しました。
・内部をスポークで確認すると、溶けきったという様子は無いのですが、肉薄になっているところがあります。なんとか溶けているみたいです。
・液を補充し、また反応が進むことを期待します。
○2009.10.13
・液量が減っていたのでまた追加しました。日中の気温により乾燥したようで、液が飛んだところは白くなっていました。(これを触るとぬるぬるしてとても危険です。)
・シートポストの厚さは昨日とあまり変化ない様子です。こう着状態のようなので、NaOHをさらに追加しました。(かなりの濃度になっている気がします。)
○2009.10.14
・液が黒くどろどろになっていたので、これはアルミが溶けているためと解釈。
・液量はシートチューブ上端ぎりぎりまで入っているので、追加はできません。
(固体で投入してもあふれます。)
・アルミの溶けた液のままでは反応が遅いでしょうから、今の液をステンレスカップに移し、新しい液を調合し、投入しました。すると再び勢いよく水素が発生し始めました。
・反応が進むのを待つとしましょう。
○2009.10.15
・液面がやや下がっており、かなり反応が進んだようです。
・シートポストの上端は灰色で、かなりやつれた感じです。スポークで中を探ってみると、スカスカと乾いた音がします。縦溝を入れた部分がとうとう溶けきって分離したようです。
・スポークでつついているうちに、どんどん奥に突っ込んでしまっているような?
・破片は奥に入ってしまったようですorz。
・気を取り直して、「これだけ腐食したのなら、もしかすると回るのかも?」
・そう思ってパイプレンチをかけてみました。
・力を込めると、、、回ります!!! おお、スゴイ。とうとうここまできましたね。回しながら上に引っ張ると、シートポストが抜けました。
・シンクロスのシートポストは食器のフォークのように溶けており、厚い部分はまだ残っていました。これを全部溶かすとなると、あと一週間位はかかったでしょう。
・シートチューブ内を確認してみました。液の飛沫を浴びると大変なので慎重に。やはりチューブ自体は溶けていません。安心しました。
・すごいと思ったのは粉体塗装で、シートチューブ上端は塗装面がやむを得ず剥き出しなのですが、溶けもせずほとんど影響が無いようにみえます。

抜けたシートポスト。(抜いてから数日後の写真なので、腐食が進んでいます。)

切断した元のシートポストの断面。(パイプレンチを掛けたのでつぶれています。)
さて、次のステージへ移行するときがきました。
・シートチューブ内の液はひとまず出せばいいとして、中に残っている残骸の処理と、シートチューブ内の中和をどうするか考えます。
1)サンポール(塩酸液)を使えば一番簡単と思えます。
中和後にできるのはただの食塩水だから、排水しても問題はないです。
(アルミはどうするか、は問題ですが、沈殿して分離するから意外と大丈夫そう。)
2)このアルカリ液のままだと、100万倍とかに希釈しないと問題がありそうです。
3)問題は、中和域を越えてしまうと塩酸で鉄がやられてしまう点です。
慎重に中和しなくてはなりませんね。
○2009.10.16
・夜、少し作業をしました。
・シートポストから液を排出します。
・水で軽くすすぎ、チューブ中の安全をひとまず確保します。もちろんこの水は桶にストックしています。
・中の状況をトングを延ばしたもので探ってみます。
......ガサガサいいます。まだ溶けていないようです。
・とりあえず、新しい液と入れ替えて、明日の朝まで放置することにしました。
・ステンレスのたらいに入れた廃液は、サンポールで中和してみることにしました。
・ピューーっとたらいの液面に吹きかけると、ならやら灰色のモコモコが現れました。うーん、ケミカル。
・局所的に中和したので酸化アルミだかなんだかに変化したのだと思います。
・うまく中和できればただの塩水+これら残骸になるはずですが、中和点を見極めるには試薬が必要ですね。
・とりあえずここまで。
○2009.10.17
・午前中、10時頃までの作業。
・シートチューブ内の液を排出。中を探るとボロボロと崩れてきました。
しめしめです。トングをうまく使い、残骸を取り出しました。
・残骸は細長くて、おそらくシートポストの薄い部分だと思います。チューブ側に張り付いていた側は、白くなっており、頑固な印象を受けました。こちら側は電食でかなり粘ったのだと思います。
・トングでさらに入念につつきまわし、アルミ屑をさらいます。ほとんど固形物が出て来なくなったので、今度は水を入れて希釈しつつ擦ります。
・固形物はほとんどなくなり、ある程度希釈したので、今度は流水を使うことにしました。
・シートチューブ内に水を入れ、洗い流します。これを何回も繰り返しました。
・スコッチブライトを取り付けた竹棒をつくり、中をゴシゴシと洗い、磨き上げます。
・ほとんど問題ないと思われるほどになったので、フレームを覆っていたカバーを剥がし、丸洗いをしました。見た限りはもうすっかりピカピカです。
・このまま乾燥させればOKと思いますが、念のため、数日間はこのまま放置することにしました。
2009.10.21
・今のところ特に変化はなく、問題ないようです。
・アルミのシートポストをまた取り付けると、アルカリ分が残っていたら腐食してしまいます。
・それを回避するため、以前使っていたチタンシートポストを使うことにしました。
・廃液はまだ放置中です。
ようやくシートポスト溶解計画も終焉を迎えようとしています。
廃液の処理は最終的には専門のところに処理をお願いできるので問題ありません。準備が80%という感じです。
この方法を
「誰かシートポストが抜けなくて困っている人に勧めるか?」
という質問を受けるとしたら、答えは、
「明確にNO。」 ですね。
読んでいて分かると思いますが、もう大変です。面倒です。気を遣います。
ノコギリや電動ツールでゴリゴリやってしまったほうが楽だと思います。
(まあそれらを揃えられなかったからこうなったんですが。)
アルカリ液の取り扱いさえ間違わなければ最も楽とは思いますけど。傷もつかないし。(普通のフレームはBB周りのシーリング処理をちゃんとしないとダメでしょうけど。)
まあそれよりも、くれぐれも
シートポストを固着させないようにするのが一番です。
さっそくシートポストを外してみてはどうでしょうか?。
フレームとシートポストが違う素材なら、固着する可能性は0ではありませんよ。(チタンでもカーボンでも固着するわけですから。)
おまけ
・今回フレーム単体にしたので古い方のフレーム(ターコイズブルー)と並べてみましたが、オレンジは19"だとばかり思っていたけれど、ターコイズブルーと同じ17.5"でした。どうりで乗りなれたサイズなわけです。(入手して何年たったから気づいたんだろorz。) まあ嬉しい誤算です。