残液と消毒綿容器からセラチア菌検出 三重・点滴事故
三重県伊賀市の診療所「谷本整形」(谷本広道院長)で鎮痛薬の点滴を受けた患者が相次いで体調を崩し、1人が死亡した医療事故について、三重県は19日、同診療所で汚染された点滴液による院内感染だったと断定した。15人の患者が出た9日の被害について、患者の血液や使用済みの点滴液の空容器の残液、点滴液の調合の際に使う消毒綿の容器から同じ種類のセラチア菌を検出。消毒綿の汚染と点滴液の長期の室温保管で、点滴液内に菌が増殖したことが原因としている。
県保健環境研究所による検査で、9日に点滴を受けた患者6人の血液、点滴液の容器7パックの残液、消毒綿の容器から、セラチア菌の一種、「セラチア・リクファシエンス」が検出された。
県によると、同診療所では点滴液を調合する際、点滴容器の注入口を消毒綿でふいていた。消毒綿には、アルコールではなく、本来10〜50倍に薄めて使う消毒液「グルコン酸クロルヘキシジン」を千倍にして使っており、県は殺菌効果がなかった可能性が高いとみている。消毒綿は日常的に作り置きされ、看護師らは、素手で脱脂綿をつかんで容器の中に入れて作っていたという。不衛生な環境での点滴液の作り置きが常態化していたとみている。
看護師らは作り置きした点滴液が少なくなると追加で調合。診療終了後の余りは捨てずに、日常的に冷蔵庫でなく机の上で保管して翌診療日に持ち越していた。7日以前に作られ、月曜日の9日に持ち越されたのは20本以上あった。ただ、点滴液に調合日の記載がなく、何日に調合されたものか分からないという。
asahi.com(朝日新聞)2008年6月19日
点滴をつめるとき、常識ではボトルの注入口(ゴム栓の部分)の消毒はアルコールですると思います。
たぶんそれは全国的にされていることだとと思います。
それをなぜグルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン液って言った方がわかりやすいでしょうか)で、しかも非常に薄い濃度にしたのでしょうか。
経費の問題でしょうか?
記事中、「本来10〜50倍に薄めて使う」との記載がありますが、それは5%の溶液を10〜50倍に薄めると、0.1〜0.5%の溶液になるということだと思われます。
それを1000倍に薄めた、即ち0.005%の濃度で使っていたということは、ほどんど殺菌効果はないと思われます。
そもそも、グルコン酸クロルヘキシジンはセラチアに対して抵抗性を示す場合があると言われています。
グルコン酸クロルヘキシジンが消毒として使われるシーンとしては、注射や採血前の消毒で、アルコール綿が使えない患者さんに使われるということがありますが、点滴のゴム栓部位の消毒は一般的にアルコールが使われます。
アルコール綿を使いすぎると、指先が荒れるということがありますので、看護師さんの美しい指の保護のために、グルコン酸クロルヘキシジンで、しかも薄い濃度だったのかも・・・
記事によると、その薄い消毒液は作り置きされており、しかも素手で脱脂綿をつかんで容器の中に入れて作っていたということですから、その脱脂綿に殺菌できないセラチア菌が付着して、混注口に塗りつけていたということになるかと考えられます。
また、ノイロトロピンとメチコバールが入った生理食塩液の点滴が、いつ調製されたのかわからずに、7日以前につくられたものが20本以上も9日に残っていたということです。
7日より前に作られたものも9日に投与された可能性があるということです。
衛生管理がずさんすぎます。
患者さんの1/3に点滴をする整形外科って、あまり聞いたことがありません。
ちょっとでも患者さんが痛いと訴えたら、点滴をしていたということでしょうか。
患者さんにしてみたら、痛いと言ったらちゃんと話を聞いてくれて点滴をしてくれる、よく話がわかってもらえるいい先生ということになるのかなあ・・・
重い副作用がでやすい薬、それ程ではない薬、程度の差こそあれどんな薬でも、全て何らかの副作用があります。できれば、薬なんて飲まずに済んでしまったら、それに越したことはありません。(患者さんの中には、薬をいっぱいくれるお医者さんがいいお医者さんだという人がいますが。)
●d-inf:薬をのむ意義
http://d-inf.org/drug/igi.html
【関連ページ】
2008/6/11「ノイロトロピン+メチコバール入り点滴で何が起こった?」
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1488.html
2008/6/12「院内感染が起きた理由」
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1489.html
2008/6/17「回収点滴からは検出せず」
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1494.html