看護師:患者への投薬量判断、容認へ…医師負担減で厚労省
勤務医の負担軽減策の一環として、厚生労働省は、看護師にも患者への薬剤投与量を一定範囲内で判断できるようにすることを決めた。看護師の可能な任務として、夜間・休日の急患に対する診療項目の優先順位の決定や患者・家族への治療方針の補足的な説明も挙げ、こうした方針を昨年末、各都道府県に通知した。医師の確認・署名を条件に、事務職員に対しても、診断書や処方せん、主治医意見書などの作成を認める。
厚労省がこうした方針を打ち出したのは、病院勤務医が過酷な労働条件に耐えられず開業に走り、勤務医不足を招いたとみているからだ。そのため、医師法に抵触しない範囲で「医師でなくとも可能な業務」を整理し、昨年12月28日付で都道府県に医政局長通知「医師及び医療関係職と事務職員との間での役割分担の推進について」を送付した。
通知は、薬剤投与量の増減を「医師の指示の下で行う看護」と明記。患者の病状が急変した際は医師が不在でも、事前に受けた医師の指示の範囲内であれば看護師による投薬量の調節を認める。また、糖尿病など慢性病患者への生活指導や静脈注射は、看護師にも可能とし、「医師を専門性の高い業務に集中させる」としている。
このほか診断書、診療録、処方せんなどの作成は、事務職員による代行を認めた。いずれもこれまでは、厚労省が「医師が行う」と指導してきたものだ。ベッドメークを業者に委託することや、臨床検査技師による採血・検査の説明なども可能とする。
政府の規制改革会議が昨年12月25日にまとめた第2次答申案でも勤務医の負担軽減策を求め、看護師による薬剤投与量の調整など、医療従事者の役割分担の見直しを盛り込んでいた。
毎日新聞 2008年1月14日
病院の勤務医は、結構過酷な労働を強いられてまして、その負担をなんとか軽減させたいということは前々から言われていました。
2007/11/26「来年度の診療報酬改定方針まとめる 厚労省」
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1308.html
夜間救急の一部を開業医さんにさせようという動きもありました。
2007/11/3「開業医の診察料分減額検討」
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1277.html
さて、
2007/12/11「看護師の処方権はいいのか?」
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1323.html
で勤務医の負担軽減に医師の処方権の一部を看護師に移譲しようという報道についてコメントつきで書いたところ、いろいろな方からご意見が寄せられました。
(一番ショックだったコメントは、「看護師より薬剤師が処方権を持つ方が恐い」というものでした)
今回の該当の通知文書は、ここで見ることができます。
●全日本病院協会:医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について(平成19年12月28日)
http://www.ajha.or.jp/about_us/activity/zen/080109.pdf
通知文書の該当部分を抜粋します。
薬剤の投与量の調節
患者に起こりうる病態の変化に応じた医師の事前の指示に基づき、患者の病態の変化に応じた適切な看護を行うことが可能な場合がある。例えば、在宅等で看護にあたる看護職員が行う、処方された薬剤の定期的、常態的な投与及び管理について、患者の病態を観察した上で、事前の指示に基づきその範囲内で投与量を調整することは、医師の指示の下で行う看護に含まれるものである。
この部分だけを見ると、看護師へ処方権を一部移譲するという大げさなことではないと受け取れます。
現在でもカルテの指示書で、例えば発熱時には、1番はじめに氷枕などのクーリングをして、それでも解熱しなければボルタレン坐薬を入れて、それでも解熱しなければドクターをコールするということがされているかと思いますけど、この通知はその範囲なのではないでしょうか。
その他の例としては、糖尿病の患者さんに血糖値によりインスリンの量を決めて投与するやり方があります(スライディング・スケール)。それも予め医師が血糖値がこれくらいならこれだけのインスリンを投与するということを指示しておいて、それに従って看護師が実施しているのが現状です。それも、この通知の範囲内ではないでしょうか。
その他、主だったところを抜粋します。
診断書、診療録及び処方せんの作成
診断書、診療録及び処方せんは、診察した医師が作成する書類であり、作成責任は医師が負うこととされているが、医師が最終的に確認し署名することを条件に、事務職員が医師の補助者として記載を代行することも可能である。
一部の病院では、病棟や外来診療科で医師の事務処理をサポートする事務職員(クラークというそうです)がいる施設があるかと思いますが、そのことを指していると思います。
ちなみに現在勤めている病院では、クラークさんはいません・・・
診察や検査の予約
近年、診察や検査の予約等の管理に、いわゆるオーダリングシステムの導入を進めている医療機関が多く見られるが、その入力に係る作業は、医師の正確な判断・指示に基づいているものであれば、医師との協力・連携の下、事務職員が医師の補助者としてオーダリングシステムへの入力を代行することも可能である。
この件に関しては、治験でちょっと苦労しています。
勤務先病院のオーダリングシステムにおいて、次回来院時の検査予約をするのは、いまのところ医師しかその権限が与えられておりません。
他の病院の薬剤師にも聞いてみたのですけど、オーダリングシステムが入っている施設では検査予約などのオーダーの権限は医師のみとなっているところがほとんどです。
CRCができたら、医師の負担が軽減できますし、さらに検査の欠測もなくなると思います。
さて、今回の通知で薬剤師にかかわるところを抜粋しますと・・・
薬剤の管理
病棟等における薬剤の在庫管理、ミキシングあるいは与薬等の準備を含む薬剤管理について、医師や看護職員が行っている場合もあると指摘されているが、ミキシングを行った点滴薬剤等のセッティング等を含め、薬剤師の積極的な活用を図り、医師や看護職員の業務を見直すことで、医療安全の確保及び医師等の負担の軽減が可能となる。
注射のミキシングをもっと積極的にやりなさいということですね。
現在のところ、病院薬剤師がやっているミキシングは、外来を中心とした抗がん剤や高カロリー輸液が主なのかと思います。
現在注射剤をミキシングせずに個々の患者さん毎にセットして、病棟へ払い出していますけど、払い出し自体は薬剤師としてただ働きです。
その行為は「払い出し」であって「調剤」ではないということなので、ミキシングまでして調剤にしたいという思惑が日本病院薬剤師会にはあると聞いたことがあります。
そうなると、薬剤師が行うミキシングに診療報酬がつく可能性があるのかと思われますが、抗がん剤や高カロリー輸液以外のミキシングを全て行うことは非常にマンパワーが必要で、いますぐにやりましょうという話にはならないかと思います。どの病院においても。
当然病院薬剤師の診療報酬点数が高い薬剤管理指導はどんどんとやらなければなりませんが、リスクマネジメントの観点から全部の注射剤ミキシングを行おうとするとどれだけ薬剤師を増やせばいいのでしょうか。
これから薬学部から大量の薬剤師がでてくるので、人員の確保はできるのでしょうけど、あとは施設の長の判断によるということになるかと思います。
まだこれから波乱があるような予感がします。