2007/10/18
夏が終わり、冷たい風の吹く季節になりました。
身も心も暖を求めるそんなとき、
私はビヴァリー・ケニーの歌声が無性に恋しくなります。
エラやサラ、またカーメン・マクレイのような大歌手ではないかも知れない。
人気のダイアナ・クラールのようにビターでパワフルな押しの強さもない。
けれど、ビヴァリー・ケニーの優しく、可憐なささやきが聴きたいときがあるものです。
28歳で自らの命を絶った彼女の死にまつわる逸話は多く聞きますが、
むしろ残された6枚(未発表デモ盤を除いて)のアルバムの中に生きている彼女を語りたい気がします。
ルーストに3枚、後にデッカに3枚を残してくれたビヴァリー。
いずれもタイプの異なる魅力的なアルバムたちです。
もしもビヴァリー・ケニーを聴いたことのない方がおられますなら、まずはデッカの3枚をお奨めしたいと思います。
彼女のスタイルが確立され、高い完成度を持つ録音だからです。
(もちろんルーストの3枚も若く可憐な彼女の魅力が堪能できます)
とりわけ彼女のラストアルバム「ライク・イエスタディ」と
「シングス・フォー・プレイボーイズ」の2枚はお奨めです。
前者はビッグバンドに女性ヴォーカルソロという往年の華麗なスタイルを懐かしむアルバム。
もっともビヴァリーの場合は、好みの小さなコンボをバックに伸び伸びと楽しげに歌っています。
後者はピアノ(とベース)のみをバックにしんみりと、けれど温かく語りかけます。
人の心の中にはいくつもの部屋があって、
大事な仕事部屋があり、
お客様をお迎えする応接間もあれば、
パーティー用の大広間だってあるでしょう。
しかし自分しか入れない静かな書斎が必ずあるはずです。
そこでは、この人の歌を静かに流していたい。
それだけで部屋の中は暖まるような気がするから。
ビヴァリー・ケニーはそんなタイプの歌手ではないでしょうか。
※「ライク・イエスタディ」は貴重なステレオ録音です。
「ライク・イエスタディ」
ビヴァリー・ケニー(Vo)
MCAビクター:B00003Q49V
「シングス・フォー・プレイボーイズ」
ビヴァリー・ケニー(Vo)
ユニヴァーサルミュージッククラシック:B000GUK5L8
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