今日はまた与那城敬さんの追っ掛け(笑)で初台まで行って来ました。
今回のこの演目、発売早々売り切れになってしまい、今回はもう無理かと半ば諦めながらネットを徘徊していたところ、親切なオバサマ(推測)からチケットを割引(会員)価格で譲っていただき(ヤフオクでは5,6千円プレミアムが付いていた!)、しかも出掛けてみて驚いたことに、前から4列目、更にほぼ舞台の真正面という好位置。
乗ろうと思っていたバスが来ずにタクシーに乗らざるを得なかったり、楽しみにしていた立ち食い蕎麦屋(
加賀)が閉まっていたりと、劇場に入るまではかなり気持ちがクサクサしていたのですが、そんなことどうでもよくなりました(笑)。
さて肝心のオペラ。
結論から言うと、僕の好きなタイプのオペラでした。
僕は常々オペラも演劇であるべきと思っているのですが、そこはそもそもが三島由紀夫の戯曲を原作としているので、ストーリーに非常に説得力がある。
しかも三島劇で用いられているセリフ回しがほぼそのまま使われていたので、あの匂い立つような世界観も、貶められずにほぼそのまま残っている。
ネットでは前半(第一幕・第二幕)が退屈という意見も多かったけど、本当にそうかなぁ。僕は殆ど眠くならなかったし、ここを丁寧に描いておかないと、後半の畳み掛けるような展開が分からなくなると思うんだけど。
アリアが無いのも僕には問題なし。
感情が高まる部分にはロマンチックな音楽が付いてたしね。
特筆すべきは腰越満美さん(影山朝子役)。
彼女の武満徹のCDを聴いた時にはあまり感心しなかったんだけど(失礼)、今日の彼女は華族としての気品も元新橋芸妓としての艶っぽさや侠も感じさせて、朝子そのものなのではないかと思いました。着物の裾を捌く所作も素敵。歌の方も出ずっぱりにも関わらず殆ど乱れずに最後まで歌い通され、お見事!の一言。
・・・と書きながら思ったのだけど、今回のキャストは視覚的にも説得力がありました。
唯一、清原久雄役の小原啓楼さんだけ、若干「貫録」を感じちゃったけど(苦笑)、理想に燃える万年青年のような宮本益光さんも、苦み走った権謀術数の与那城敬さんも、どちらにもウットリしました。また女中頭草乃はオキャマとしてぜひ演じてみたい役の一つ(笑)。
閑話休題。
惜しむらく、というか、ちょっと可哀想だったのは、影山伯爵の音域かな。
パンフレットには「影山悠敏伯爵(バス・バリトン)」と書いてあるけど、与那城さんはバス・バリトンではないでしょう。むしろハイ・バリトンなのでは?。あの低い音域の中、よく健闘なさってたと思いました。
そしてラストシーン。
音楽と踊りと舞台装置が混然一体となって、しばし忘我の時間でした。ブラボー。
一般受けするオペラかどうかは分かりませんが、とても贅沢で濃い日曜の午後を過ごさせていただきました。
客席やロビーで、池辺晋一郎さんや畑中良輔さんも見かけることができて、スノッブな気分も満たされました(笑)。
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池辺晋一郎「鹿鳴館」
2009/2010シーズン
【全4幕/日本語上演/字幕付き】
スタッフ
【原作】三島由紀夫
【指揮】沼尻竜典
【上演台本】鵜山 仁
【演出】鵜山 仁
【作曲】池辺晋一郎
【企画】若杉 弘
【芸術監督代行】尾高忠明
【主催】新国立劇場
(指揮)沼尻竜典
(演出)鵜山 仁
キャスト
【影山悠敏伯爵】与那城敬
【同夫人 朝子】腰越満美
【大徳寺侯爵夫人 季子】坂本朱
【その娘 顕子】安井陽子
【清原永之輔】宮本益光
【その息子 久雄】 小原啓楼
【飛田天骨】早坂直家
【女中頭 草乃】大林智子
【宮村陸軍大将夫人 則子】薗田真木子
【坂崎男爵夫人 定子】三輪陽子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

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