「自分の感じたまんまを歌にするのさ。感じたまんまを唄うのさ」なんつって歌唱したはいいけども。おっきな声で。どうも照れくさい。くさいんだ。感じたまんま、正直なまんま、ってのは東から昇ったばかりの太陽のように清々(すがすが)しくてたいへんよろしい。だがしかし、ハッキリきっぱり云わないのもいいんだなぁ、これが。なんか思わせぶりで。なんか裏がありそうで。フィクションとノン・フィクションの境界線上みたいな。テレビ・ドラマや映画の準主役の役どころがどこか影を引きずってる場合みたいな。なんか「カギを握ってんじゃねぇか」って。もしかして「キー・パーソンかもしんない」って。隣家の庭をチェックするみたいに想像する。物干し竿のロックTシャツが風に揺れている。
感じたまんまを唄う事が照れくさいあいつは「んなら」つって比喩を用いるんだ。ギターはほうきになり、ミサイルはペンになり、人生は線路になり。んでキミとボクはトムとハックになったりして。“現実”を突きつけられるよりも“現実っぽさ”の方が逆に身近に感じる事ができたりするんだ。サーキットで走るよりゲーム・センターのカー・レースとか。ギターを弾くよりライブDVD観ながらのエア・ギターとか。ヤクザ映画を観た後に肩で風を切って歩くとか。リアルよりもリアリティ。
多くの男性ミュージッシャンが女性の名前をタイトルに付けるようなことをしている。古今東西で。老若南北で。高低長短で。その人は実在の女性の名前なのか。その人はとりあえずの一般的な名前を使用か。その人は確固たるイメージからの命名か。
野郎共がみんな作ってる。みんな唄ってる。
部屋のレコード棚を探してたら、たくさん発見できたよ。女性名タイトル曲。そのいくつかを抜粋掲載。ついでなんで訳詞を読んだり曲の概要をインターネットで検索調査なんかせずに、歌声やメロディーやバンドサウンドのアレンジの仕方とか、そんな事をトータルに自分で判断して吟味して、それぞれの曲の印象を言葉で表してみたよ。あくまで個人的なイメージなんで原詞からのしっかりした邦訳とは違います。あしからず。
☆BILLY JOEL/Laura
1982年発表のアルバム「THE NYLON CURTAIN」に収録
「ローラはいっつもコーヒーを飲みながら窓から外を眺めてる。あぁローラにしゃべり掛けたい。相手にしてくれるかな?でもきっとあの喫茶店のB.G.M.はビートルズに決まってる」
☆THE KINKS/Monica
1968年発表のアルバム「THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」に収録。ビリー・ジョエルがローラだからキンクスもローラが来ると思ったでしょ?そんな当たり前の事しませんよーだ。
「モニカは白い自転車に乗りながらこちらに近寄ってきた。微笑みをボクに向けながら。そのエクボかわいいよ。おっと曲が浮かんだよ。いいかい、もちろんイントロはハーモニカ」
☆THE PRETTY THINGS/ROSALYN
ガイド・ブックによると1964年発表の彼らのデビュー・シングルらしいけど写真はボクが所持するノートン・レコーズ2000年発表のシングル集.。
「ロザリンはロックンロール・ガール。いっつも花柄のパラシュート・スカートでクルクル廻ってる。俺はいっつも想像してるのさ。クルクル廻った彼女は目が廻っちゃってふらふらと俺の胸に倒れこむってね。ヘイ、ボ・ディドリー。その後のやり方を教えておくれ」
☆9 BELOW ZERO/HELEN
1981年発表のアルバム「DON'T POINT YOUR FINGER」に収録。
「ヘレン、変な顔はしないでおくれ。んな事やってられへん、だって?ギター弾くのに右手をギターネックに叩きつけるなんて考えられんって?常識なんてあってないようなものだよ。ライトハンド奏法を一般的にしたのはヴァン・ヘイレンって人だよ、ヘレン」
☆ELVIS COSTELLO/Alison
1977年発表のアルバム「MY AIM IS TRUE」に収録。
「ねぇアリソン、空想や絵空事はもういいから現実味のある話だけ話しておくれ。せめてありそうな話だけでも、アリソン。えっ?わたしの計画は真実だって?あらそう、アリソン」
☆THE POP/MARIA
1979年発表のアルバム「GO!」に収録。
「まぁいいや、なんてマリア。あきらめちゃダメじゃん。マリア、スカートが舞い上がるマリリン・モンローのポスターに翻弄された事はないのかい。本当?ないのか・・・まぁリアルじゃないしね」
☆THE RUBINOOS/JENNIFER
1979年発表のアルバム「BACK TO THE DRAWING BOARD!」に収録。
「ジェニファーは今年の初夏から初秋の間、毎朝咲き続けたアサガオに感謝と惜別の投げキッスを送ると一気に茎を引き抜いた。その瞬間、種は地面に舞い落ちる。自然の摂理は無感情」
☆ROBERT JR. LOCKWOOD&THE ACES/ANNA LEE
発表年不詳(おそらく1975年発表)のライブ・アルバム「BLUES LIVE !」に収録。
「アンナ・リー、あんなに愛していたけれど。あんたはあんなアンナ・リー。あんたの穴もアンナ・リー」
☆KEITH RICHARDS/EILEEN
1992年発表のアルバム「MAIN OFFENDER」に収録。
「アイリーン、キミはアンナ・リーみたいな女じゃないよな。なに?俺よりミックの方が好みだと?ばかやろう!」
☆JOHN LENNON/OH YOKO !
1971年発表のアルバム「IMAGINE」に収録。
「ヨーコ、横にいておくれ。そして俺は喜んで」

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