A:「てめぇ、でかいツラしやがって。いい気になってんじゃねーぞ!」
B:「いや先輩、ボクはそんなに顔、大きくないです。帽子のサイズだって56センチですし」
A:「くーっ!んな事、言ってんじゃねーんだよ!」
B:「いや、ボクの野球帽はニューヨーク・メッツのオフィシャル・グッズで・・・」
A:「くーっ!てめぇ、バカにしてんのか?このやろー!顔貸せ!」
B:「100円/30分」
A:「くーっ!コイン・パーキングかっ!」
B:「まあまあ冷静に。もしかしてボクの顔のどこかが気にさわるんすか?」
A:「そうじゃねーよ!おまえのバンドの事だよ!」
B:「はぁ」
A:「インディーから音源、発売したらしいじゃねーか!」
B:「それがどうかしました?」
A:「くーっ!だから俺が何を言いたいか察しろよ!」
B:「サッシの影で冊子を読んで 日差しの指図を察しろよ・・・みたいな感じすか」
A:「ちょっと言わせてもらいますが、おまえは無理やりニッポン語で韻を踏んでる70年代初頭に多勢存在した通称:和製ボブ・ディラン気取りか?おうっ?っつーか、そーゆー某大学文学部卒なんつー肩書きを掲げてるような野郎が言いそうな発言が心底、気に喰わねーんだよ、俺は!例えば、ハンバーガーが大好きだとするだろ。んで納豆も好きなんだ。んじゃぁハンバーガーに納豆を挟んでみましょう〜みたいな。どう思うこれ?変だろ?ミクスチャーって言葉や考え方をどう捉えるか?って話だな。なんでも混ぜりゃあイイってもんじゃぁないぜ。履き違えてるヤツが多過ぎる!エンジニア・ブーツとサンダルを履き違えたとするだろ。自動車修理工場でサンダル履いてたらヤケドするぜ!ケガするぜ!使い方を考えろ!って事さ。わかるだろ、キミも」
B:「はぁ。そう言う先輩が思いのほか、へ理屈的文学系って事はわかりました。とりあえず、そんな先輩でも顔色だけはうかがって喋ってるんすがね」
A:「くーっ!いちいち応答がシャクにさわる奴だな!てめーは!」
B:「んで?」
A:「くーっ!おまえ、俺が業界でそこそこ顔が利(き)くって事は知ってるだろ!」
B:「あぁ、あぁ、何を言いたいのか、やっとわかりましたよ、先輩。レコーディング音源でゲスト演奏したかったんでしょっ?(含み笑い) 『俺様だってまだ演ってるぜ』って旧友に知らしめたかったし、ついでに知らない人にも顔を売りたかったんでしょ(含み笑い)」
A:「くーっ!おまえなんだ!その(含み笑い)×2回って。ばかやろー!」
B:「いやいや、これでも気を使ってるんすよ。だてにメッツのオフィシャル・キャップ持ってませんよ」
A:「その話はもういいんだよ!全然つながらんし。ってか、けっこうおまえもクドイな」
B:「39度の熱を帯び 風邪気味わたしはクドかれた 苦道を知らないあなたから クドクド言われるスジは無し 工藤俊作あらわれて ベスパにまたがりこう言った 『工藤は苦労を黒く塗り 昨日の苦悩はどこへやら 公文式でもやらまいか 困った時の神頼み いやいや苦悶の日々に答え無し』」
A:「お疲れ」
B:「今回の音源は若輩者のボク等の1stっすから。ここでいきなり先輩にご出演願ったとして、もし売り上げや評判的にコケたとしたらある意味先輩の顔に泥を塗るわけじゃないっすか」
A:「ん・・・まあ・・・そうだな・・・」
B:「でしょ。だからボクとしては2ndで先輩にお願いしたかったわけなんすよ。マジで。様々な楽器ができるマルチ・プレイヤーな先輩。WOW!そして業界にも顔が広い先輩。WOW!そんな様々な顔を持つロックな先輩の顔を立てたかったんす」
A:「なんか、おまえクチハッチョー(口八丁)だなあ」
B:「開いた口がふさがらないでしょ?まさに・・・」
A:「まさに?」
B:「モアイ像。ロックな先輩の顔を立てるように、ロック(岩石)な顔が立っている」
A:「おあとがよろしいようで」
B:「お茶を濁してるだけで」
A:「さようなら」
B:「さようなら」
1970年発表、FACESのアルバム“FIRST STEP”。一枚目だからタイトルもそんな付け方なんだろうけど、すでにバンドの指向性が固まってる。すごいなあ。ロン・ウッドはこのバンドに入る前にジェフ・ベック・グループでベース担当してて。彼はもう、ギター弾きたくて弾きたくてしょうがなくって。んで家に帰るとギターばっかり練習してたに違いない。いろんなジャンルのギターを。ジェフ・ベックが弾いてたのを真似したりしてね。だからこの1stでいきなり爆発してるんだ。
1971年発表、FACESのアルバム“LONG PLAYER”。A面の5曲目に『MAYBE I'M AMAZED』って曲がライブ・ヴァージョンで入ってて。最初聴いた時点で「うわっ!カッコいい〜〜〜!」って思ったの。「誰の曲だろう?」って。フェイセズってメンバー5人とも曲を作れるんだよね。その時点でスゴイんだけど、この曲は誰の作品だ?って思ってクレジット見たらポール・マッカートニーって書いてあったよ。なるほど納得。
1971年発表、FACESのアルバム“A Nod Is as Good as a Wink...To a Blind Horse(馬の耳に念仏)”。人間がする事は世界中のどこであっても似たようなもんさ。だから日本でのことわざと似たニュアンスの言い伝えが例えば英語圏の国々にもあるらしい。A Nod Is〜って言葉を英語辞典をたよりに直訳すると「盲目の馬にウィンクするような合図」な感じ。「やっても意味がない事」みたいな。だから邦題:馬の耳に念仏って解釈なのか。改めてことわざ辞典で調べたら、あったあった馬の耳の英語版。“It is no use singing psalms to a dead horse”「死んだ馬に賛美歌を歌ってやったって無駄な事さ」。やっぱり馬なのね。
ちなみに俺が最初に買ったFACESのアルバムがこれ。これを買ったすべての人がそうであるようにA面5曲目『STAY WITH ME』って曲に泣いた。
1973年発表、FACESのアルバム“Ooh La La”。ラスト・アルバムなんだけど素晴らしい内容。裏ジャケットに5人の顔写真が載ってるんだけどロン・ウッドが真ん中なのね。んで1stアルバムを再び見ると。こっちでもロン・ウッドが真ん中なのね。こんな所に俺は興味が向かうんだ。ヴォーカルのロッド・スチュアートがバンドのアルバム写真、最初から最後まで真ん中ではないという事実。そのくせ同時期にロッドはバンドと並行してソロ・アルバムを連発して売れていたという事実。そしてこの日本盤レコードのインナー解説にメンバー5人が揃った写真が数枚載っているんだ。ロッド・スチュアートやロン・ウッドに比べロニー・レーン、ケニー・ジョーンズ、イアン・マクラガンの3人は背が低いの。3人の前バンド:SMALL FACESは「背が低い4人が集まったんでスモール・フェイセズって名前になった」なんてな著述をいろんな本やガイドブックで何回も見てきたぜ。このインナー写真を見て「ホントだったんだ!」なんて感心してしまったんだ。
個人的な気持ちをここで記しちゃうけど。背の低い人達がギンギンのバンドマンであるって事自体に俺は最大の賛辞を送ってしまうのさ。「背が低いって事にコンプレックスを抱いてる人々に勇気を与えてくれてありがとサンキュウ」ってね。

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