ジェイムス・テイラー(以後JT)はオルガン弾き。80年代から現在まで幾多のモッズ・リバイバル・バンド関連のアルバムに彼の名前を発見できる。自らのバンド、ジェイムス・テイラー・カルテット(以後JTQ)だって何枚もアルバム出してるよ。初期なんてギンギンのモッド・サウンド。ボクの大のお気に入り。その彼のライブを観ることができるんだ。しかも名門ジャズ・クラブ、ロニー・スコッツだぜ!WOW!
ロニー・スコッツに入るとブロンドの姉ちゃんが座席へ案内してくれた。この時点で通常のライブ・ハウスとは違うね。指定席でもないのに席へ案内してくれるんだ。んで座席。テーブルつきのソファーみたいなイス。色は赤。えぇ〜っ?ジャズってこんな雰囲気でお酒や食事を味わいながら楽しむ音楽なの?席に座るとバー・カウンターが右手に見えた。「よし!酒を買いに行こう」って思ったらそっちからボーイが注文を取りに来た。正装で。これがジャズ・クラブなのか?ライブ観る時、最初はだいたいビール飲むんだけど、そのボーイの声を聞いてたら「ジン・トニック、プリ〜ズ」なんて気取ってカクテルを注文しちゃった。ボクは周りの雰囲気に飲み込まれやすいタイプなのさ。会場のキャパシティは全椅子席、満員で300名ほどか。しだいに客席も埋まってきたよ。午後7時半を過ぎた。そろそろスタート。
前座が演奏始めた。ピアノ、ウッドベース、アルト・サックス、ドラムスの4人組。スタンダードを演奏してるんだろう。さすがに上手い。名門ジャズ・クラブだし。前座がこのレベルだぜ。JTQはどんな演奏をしてくれるんだろう。期待が高まってきたよ。前座が40分ほどの演奏を終えて休憩。モスコ・ミュールを追加。ショウガが効いててド美味い。そしてしばらくすると場内アナウンス。メンバー登場!JTQが演奏を始めた。
スゲー!スゲー!スゲー!ハモンドB-3をJTはギンギンに弾きまくる。他のメンバー、エレキ・ギター、エレキ・ベース、ドラムス3人の演奏もプロフェッショナル。まさに。JTQのアルバム、中期からはジャズ風味な路線になったんだけど、ちょっとボクには苦手で。それ以降アルバムを買い続ける事にはならなかった。だから正直、この日の演奏もジャズどっぷりだったらボクは楽しめるかな?って思ってたのは真実。ジャズ・クラブだし。そしてその演奏。まさにモッド・ライクでした!どカッコいい!ゲストも途中で登場。ヴォーカルに黒人の若い女の子や白人のトランペットとサックスプレイヤー2人。途中で休憩をはさみ後半がスタート。ボクは居ても立ってもいられなくなったんだ。「踊りながら観たいね」「うん」家内とふたりでバー・カウンターの前のスペースに移動。先程の休憩時間に追加した2杯目のモスコ・ミュール片手に。ちょうどそこはステージの真正面になる好位置。「イェ〜イっ!」とか叫びながらのノリで楽しんじゃった。ジャズ・クラブだし場違い?んなもんカンケーねぇぜ!俺には!
アンコールの前にJTがステージ上で言う「今日はニューアルバムも持ってきてるんで欲しい人が居たら後で売るからよろぴく〜」楽しいライブは合計2時間に及んだ。お客さんも大喝采。するとどうだろう。JTは自分の愛器:ハモンドB-3の上にCDを並べ始めた。「えっ〜〜〜っ!ステージ上で物販?しかも自分の楽器をテーブル代わりにしてるよ。それよりもまず、スタッフやバンド・メンバーじゃなくってJT自らがやっているぜ!」ボクは言葉を失った。感動とか感激とか衝撃とかとはまったく離れた場所にある気持ちだったんだ。そしてタイミングを見計らった。もちろん物販でCDを買う事に決めたよ。んでもあれを見てみろよ。たくさんの人たちが並んでるぜ。今、行ってもなんにも喋れんぜ。あいにくマジック持ってないからサインもらえれないけどボクは彼に感動を伝えたい。そしてニッポンに来てくれ!って言いたかったんだ。あんなジャジーでダンサブルな音楽だったらニッポンの若者に絶対に受け入れられると思ったんだ。モッズやジャズの人にしか知られてないなんてもったなさ過ぎるって事さ。
物販に集まってた人が少なくなった。ステージに近づく「こんにちは。最高でしたよ。ボクらハネムーンでニッポンから来たんです」「おぉ〜ニッポンから。アリガト」おぉ?アリガトってニッポン語知ってるじゃん。「ボクはモッド・リバイバル・バンドが大好きでJTQのアルバムだってたくさん持ってるんです」「あっ、そうなんだ」「いつかニッポンに来てください」「スミマセンスミマセン」おぉ?スミマセンってニッポン語も知ってるじゃん。ボクらは固い握手を交わしたんだ。
イギリス最後の夜に最高なモッド・ミュージックに触れることができたのさ。やったーっ!
燃えるロンドン・ナイトは終わりを告げた。朝が来た。ついに旅行の最後の日がやってきたんだ。
運良くヒースロー空港からの出発時刻が遅かったんで半日ぐらいロンドン市内でブラブラできた。はぁ〜も〜動きに動いた5日間だったね。だから6日目、最後の日はの〜んびり絵でも見て過ごそうって事にした。ボクらはふたりとも音楽同様、絵画鑑賞も好きなんで。最初に“scream”というギャラリーに行った。大好きなロン・ウッドの絵が展示されてるって噂を聞いたからだ。行ってみてビツクリ。ロニーだけでなく著名なミュージッシャンの絵がいっぱいあったんだ。すんごく小っちゃなギャラリーだよ。んだけど「なんでここにあるの?」ってな絵があった。一番ビツクリがカート・コバーンが17歳の頃に描いた絵。2枚あった。アクリルかなんかで心象風景みたいなのを描いてた。どちらも。後にニルバーナで一世を風靡するオトコ。当時のシーンのカリスマ的扱いなオトコ。そんなオトコがティーンエイジャー時代に描いた絵はやっぱり“そんな”匂いが充満してた。凄かった。その後はナショナル・ギャラリーという巨大な美術館。デカ過ぎるんでここではふたり別行動。最後になって初めて別行動。笑える夫婦。時間も無かったんでボクは印象派の絵を中心に観た。
帰りの飛行機ん中では座席の真ん前に付いてるモニター画面の中で音楽を選択し聴いた。好きなバンドの音源もいっぱいあったけど、そんなもん飛行機ん中で聴いたって意味ないら。せっかくだ。聴いた事もないバンドやボクのロックンロール・ハートに記されてる『いつか聴いてみよう』リストん中の音源をセレクトし徹底的に聴きまくったよ。多分みんな、インターネットの媒体とかでいろんなバンドの音源を『ちょい聴き』してんじゃないかな?きっかけはなんでもいいと思う。お気に入りに出会うんだったら。でもボクはそういうので聴いたりしないんだ。なんかお金払わずに試聴感覚で聞くのって性(ショウ)にあわないんだ。今回は高い飛行機代金払ってるからね。だから徹底的に聴きまくったよ。
行きと同んなじで帰りも香港で乗り換え。成田へと向かう機内でも聴きまくり。ニッポンへあと2時間となった頃、ボクは機内でビールを注文した。そして飲みながら聴いている。ロックに酒。音楽に酒。ノリノリ。酔い酔い。そして・・・「ガチャぁ〜ん」なにかのはずみでビール缶を倒してしまったんだ。「あっ!冷てぇー」「すみません!大丈夫ですか!えっとータオルタオル」あろうことか隣席のニッポン人のおじ様のひざにビールをぶちまけてしまった。「すみませんすみません」ボクは何回機内で謝ったんだろう。
その後はビールも飲まず。音楽も聴かず。2時間の間じっと座席で待っていた。成田空港への着陸を待ち続けていたんだ。そしてふと思った。
「あぁ〜隣の人があのイケ面イギリス野郎でなくて良かった」って。
おわり
ジャズ・クラブ、ロニー・スコッツ。なんでこんな俺がジャズ・クラブに行くようになってしまったんだろう。ちょうど2年前っ位だよ、ジャズって音楽に興味を持ち始めたのは。そんな流れの中で行き着いたんだと心底思いました。今回は。3枚目の写真は店内の内壁。4枚目の写真はステージ。なんと今年で開店50周年なんだってさ!すげぇー!
JTQのニュー・アルバム“NEW WORLD”。ジャジーです。良い感じに。
ギャラリー“スクリーム”のガラス。ほらほら、いろいろ書いてあるでしょ、ミュージッシャンの名前が、誇らしげに。めっちゃ狭いです。ホントに。でも、いいギャラリー。

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