今日は天気が良いから。
お陽さまサンサン陽光まぶしい午後さ。クルマを運転するとしよう。
こんな天候を英語ではサニー・アフタヌーンなんて呼ぶんだろう。
Sunny Afternoon って。
ルームミラーから後方車両に目をやると『空車』表示を出したタクシーが左にウィンカーを出し交差点を曲がる。
道路工事現場に差し掛かるとその前後に立つ旗振り人夫達がトランシーバー片手に赤白の旗を振っている、まるで10日間風呂に入っていないキューピーの肌みたいな色あいの防寒着を羽織って。
1階が駐車場、2階が店舗というレイアウトの理容店のサインポールがVの字で二本回ってる。
その下を初老の男とラブラドール・レトリーバーが添い添われゆっくりと歩いている。
大きくて厚いレンズのメガネを掛けた中年女が派手な色彩で大小の四角形がまばらに配置されたデザインのセーターを着てバス停に立っている。
独りで歩けるようになったばかりの幼少児を連れた茶髪の若い女が物憂げな目線を向ける。
平成になってから整備された街道沿いにあるブライダルタウン、その北隣のうなぎ屋の暖簾がからっ風に揺れている。
1年前にテレビ紹介された事もある人気の美容室の駐車場には今日もクルマがいっぱい。
個人経営の内科医院の裏口から出てきた看護服をまとった3人の女達が東方向4軒となりのT字路にある本屋に向かって歩いている。
その本屋の南側に隣接するケーキ屋の前では2人の30歳前後の女達が婦人用自転車のハンドルを握りながら立ち話をしている。話はまだ続きそうだ。
広い駐車場を備えたコンビニエンス・ストアーには10トン・トラックが横一列に止まっている。
右から3番目のトラックの右ドアの取っ手にサングラスを掛けたドカ・ジャン姿の男が手を掛けている、タバコをふかしながらツナ・サンドウィッチとビター味の缶コーヒーと週刊マンガ誌が入ったコンビニ袋を片手にぶら下げて。
国産車ディーラーでは先週の新聞紙上でモデルチェンジ発表されたばかりの小型車が各色取り揃えられ新型車だからって事で誰が見ても生意気そうに感じるそのツラ構えをこちら側に向けている、その横で紺色の職服を着た店員がホースで水を撒いている。
公立小学校では5時限目の授業の真っ最中で半袖半ズボンの低学年生徒がなわとびを飛んでいるし高学年生徒がグラウンドを走っている。
以前はコンビニエンス・ストアーだったであろうと想像できる店構えの携帯ショップのウィンドウの向こうで店員の女があくびを噛み殺した。
片側2車線の国道で家庭用食材デリバリー業のクルマが低速で追い抜いていく、ボクのクルマを。
休憩しよう。一服させとくれ。
国道沿いにあるバッティング・センターとゲーム・センターとオート・レストラン(そこはおにぎりやカップ麺やフライド・ポテトやたこ焼きなんかが『FOOD MENU』なんて名前のもとにギュって押し込まれたような自動販売機が多数設置されているために『オート・レストラン』なんて安易な名前を付けられてしまったんだ)なんてな店舗が共存するスペースの駐車場にクルマを駐める。
水筒の蓋を開けるとコップに注いだ、ハチミツ入りのレモンティーを。バターココナツを取り出す、スコーンの代わりに。
キミがその行為を英国の伝統的習慣“アフタヌーン・ティー”って呼ぶんならそれでもかまわない。
Afternoon Tea って。
夕焼けが西空を染めるまであと数時間。
今日は天気が良いから。
1966年発表、THE KINKSのアルバム“FACE TO FACE”。B面6曲目に『SUNNY AFTERNOON』収録
2008年発表、SONHOUSEのアルバム“HOUSE STOMP”。15曲目に『一服させとくれ』収録。
1967年発表、THE KINKSのアルバム“SOMETHING ELSE。B面3曲目に『AFTERNOON TEA』収録。

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