昨年11月。小春日和の日曜日。「カレー・ライスのドリンクは水。パンク・ロッカーはカメラを向けられたら舌を出す。そう決まってる。だから天気のいい日はツーリング。そう決まってらあ」その男ひとりごちると125ccのスクーターをキック・スタート。浜松市南区周辺をチョロチョロと走行。遠州灘からの南風は強いから。幅10mの道路、両側に落ち葉が溜まってる。何回も書き直した日記帳に残る消しゴムのカスみたいに。ふいにメーター・パネルを見ると制限速度40km/hの市道を42km/hで走行していた。これは法律にタッチだ。明らかに法律に触れている。彼は考えた。Should I Stay or Should I Go 。行くべきか行かぬべきか。長い間、逃げ続けるヤツもいれば自首するヤツもいる。さて彼はどうしよう。スマートにシュッと出頭すべきか。電光石火で。でも彼は迷ってる。まるで電光石火の線香花火。チリチリチリ。優柔不断な導火線が燃えている。
仮に自首したとする。わずか2キロ・オーバーの速度違反。おそらく先方は真面目に取り合わないだろう「はいはい、わかりました。今回のところは大目に見ますんで以後気をつけてくださいね」なんて軽くあしらわれちゃったりして。悪がはびこるこの世の中、おまわりさんもヒツジの鼻クソみたいな事にいちいち付き合っていられない。おまわりさんはレレレのおじさんがいつも竹ぼうきで掃いてるみたいに忙しいのさ。いろんなところにお出かけしなくちゃなんないのさ。んで彼。“プライド”ってやつがピノキオの鼻みたいに高い彼だから。自首したならしたなりの対応や反応が欲しいわけで。ライブで客にコール・アンド・レスポンスを強要するような演奏者っているだろ。あんな感じ。だから「はいはいはい」なんて軽くあしらわれた日にゃぁ自分がバカにされてるような気がしてくるんだ。難しい男さ。おまわりさんさんの事好きでないけど思い切って話しかけたアカツキには会話のキャッチボールをしたいんだから。まったくもって扱いづらい男。サビ抜きの寿司を注文したのに喰う時はわさび醤油を使ってしまうような男。
こんな彼。いわゆる堅物(カタブツ)と言えるだろう。融通のきかぬ性格と言えるだろう。歩く方程式と言えるだろう。そう、彼は自分の世界で生きている。自分の世界に忠実なのさ。3.141592・・・終わりなき円周率でさえ最末尾があると信じてる。そう、彼は超強力な杓子定規を持ってるんだぜ。
あの日から3ヶ月近く経った今でも彼はスクーターに乗りながら考えているらしい。行くべきか行かぬべきか。優柔不断な導火線がまだ燃えて続けているのさ。彼。もうちょっと柔らかくなれればいいのに。ハプニングをニュアンスで語るように。シリアスな場面でもジョークを言っているアメリカ映画の主人公のように。握ったとたんにブレーキが効き過ぎてすってんコロリンしない為のブレーキ・レバーの遊びの間隔と感覚のように。ゆるりゆるりと。そうすれば答えが見つかるかもしれない。いや、答えなんて、もしかしたら無いかもしれない。でも、判断はできるようになるはず。
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1年12ヶ月のうち、なぜ2月だけ28日間なんだろう。1、3、5、7、8、10、12月の31日間ある月どれかから1日間を2回分、2月に寄付すればバランスよくなるのに。そして本年は4年に1度、うるう年。2月は29日間。《1年は365日》って規則を設けたってちょっとずつズレが出ちゃうんだろう。規則なんて権力者の「利己的な言葉」「利己的な都合」「利己的な数字の辻褄あわせ」みたいなもんだから。ズレが溜まって1日分の誤差が出た「んじゃぁ28日しかない2月を1日増やしてプラマイ・ゼロにしましょうや」「いいね、それ。グッド・アイディーア。やっちゃいましょう」みたいなノリのうるう年。太陽と地球の関係にも遊びがあるんだ。
今度、彼に会ったら言ってあげよう「ねぇキミ!円周率の最末尾は見つかったかい?えっ?まだ見つかってない?そうか。がんばってください。でもよ、そのまえにキミの頭ん中に座してる『1000の杓子定規』を折るのが先だと思うよ。もっと遊ぼう」。
B面5曲目に『XMAS IN FEBRUARY』収録。ぶっちゃけた話、ルー・リードの全発表作品のうちボクが所有してるのは5分の1ぐらいの枚数だと思う。そしてなぜ89年のこの作品を買ったのかの理由も覚えていない。どんなバンドにしろなるべく発表順に作品を買おうと決めてるボクなのになぜこの作品を買ったんだろう。
ジャケ写真を見るといろんな衣装でキメたルー・リードが5人立っている。実は先日までジャケットに写ってるのはルーと4人のバンド・メンバーだとボクは思い込んでいたんだ・・・って事はここだけの秘密でよろしくね。
1992年発表、シオンのアルバム“ 螢”。6曲目に『2月というだけの夜』収録。ホタルって言葉を漢字変換すると蛍って我がパソコンでは出てきた。 螢って旧字体なんだね。なるだけ簡単にものごとを処理してく事が重要な時代さ。だろう?だから螢より蛍なんだろう。総画数5つ減少さ。だけどもよ、虫の字の上に火の字が2つ乗っかってる方が淡い光りを灯(とも)しながらゆらゆらと初夏の夕暮れを舞っているホタルらしいと思うら?イメージする方が重要な場合だってあるのさ。ネット販売で簡単に手に入れるよりお店を廻って探して、んでやっと手に入れる喜びの場面。それにちょっと似てる。そして、シオンの数々の歌の世界に出てくる情景はまさにそれだと思います。

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