「急がば廻れ」なんてな事をア奴がくどくど言うもんだから、従ってやった。
満月は誰が見ても満月。どっから見ても満月。そんなもんさ。したがって従ってやればア奴が満足。その満足そうな顔を見てる俺が満足。どっから見ても満月。してやったり。まぁ俺が月の見える場所に居ればの話だがね。夜空に雲がたなびいてゆく。
しかし目的地があるんなら早めにそこに着いた方がいいと思う。「急がば廻れ」なんてな事を言ってる場合じゃありません。って事さ。仮に尿意なんかをもよおしてたとしたら尚更の事。早く着いた方がいい。急がば急げ。そして目的地に着いたらその目的を達成する前にキミがするべき事はたったひとつ、現在キミの目の前にぶら下がっている『尿意』という名の仮止め的な仮目的を流してしまおう。排泄だ、排泄。コンビニ探し回って、そこに入ったらレジスターの前にいるアルバイトにひと言「トイレ借ります」って告げて化粧室に入室すればいい。目的は早く達成した方がいいに決まってるさ。スッキリするし。
ところで“夢”ってのは数値じゃぁ測れない。見たり語ったり抱(いだ)いたりはできるけど。たとえばミックに憧れてる男が居たとする。そして奴も歌手。ミックと同んなじプロ・ミュージッシャン。奴の平成21年度の目標はレコード通算売り上げ1000万枚突破らしい。現在の累積数値898万枚。目標達成に今期はミリオン・セラー作品発表が必達条件。それとは別に奴には奴の“夢”ってのがあって。それは「ミックと一緒にステージで唄う」事なんだ。そして日々の努力が功を奏してか奴はラッキーにも今期末にて通算1000万枚のレコードを売り上げる事ができたんだ。奴はラッキーマン。でも、たとえそんだけ売り上げたとしたって憧れの男、ミックと一緒のステージに立てるとは限らない。奴の夢が叶うとは限らないのさ。
『目標を達成する』とか『目的地に着く』って、これは必ずしも『夢が叶う』って事とは一致しない。前者は「ある到達点までの距離を埋めてゆく」ってニュアンス。後者はさらに「運とか何らかのタイミングがそこに合致」しないと不可能っぽい。ふたつは似てるけど違う。パブリック・イメージは一緒だけど違う。ピーマンとパプリカみたいなもんさ。
ところで平成21年度の目標達成したミックに憧れてる男。3月上旬のある日、来期の目標提出を所属事務所から指示された。彼は『平成22年度内にミックとの共演を果たす』と書いて提出。彼の唄は仕事なんだ。そして仕事には遊びもまわり道も許されないのさ。
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遊びもまわり道もせずってのは同んなじ場所をクルクル廻ってるみたいなもん。んな事していても風景は変わらない。せいぜい雪が舞ったり、雨が降ったり、ギンギラギンの熱射で汗を掻くくらいのもの。だから変わらぬ風景の中で筆を振る色彩画家がいるんだ。歌を唄う歌手がいるのさ。遊んでる。寄り道してる。
THE WHOの前身バンド名がTHE HIGH NUMBERSってのは有名な話。だけどその前にTHE DETOURSって名前でピートやロジャーやジョンが演ってたのは知る人ぞのみ知る事実。たぶんそこから名前を頂戴したんであろう。90年代前半にDETOURって名前の英国MODインディー・レーベルがスタートした。現役のモッズ・リバイバル・バンドの音源発表はもとより1980年前後のレアなバンドの編集盤も発表してくれ多くの人から重宝がられた。DETOURってニッポン語で「まわり道」って意味らしい。
スタイルに固執するおまえや俺はまわり道自体を上からなぞってんのさ。
満月の夜空に今夜も雲がたなびいている。
THE DETOURSの名前が載ってる当時のフライヤー。ただ単にフライヤーのデザイン自体がどカッコいい。
1993年発表「THE PERSUADERS/FINISHED FOREVER」品番DR001。DETOURからの記念すべきレーベル一発目。限定300枚プレス。一発目のリリースで「フィニッシュド・フォーエヴァー」ってタイトルなによ?って気もするが・・・。このバンドもう1枚シングル発売しただけでアルバム発売まで至らなかったけど、いいバンド、アマチュアとして。
1995年発表「THE CLIQUE/BAREBACK DONKEY RIDING」品番DR027。80年代後半からロンドンで活躍したザ・クリーク。とんでもないバンド。おそらく当時のシーンのフェイス(リーダー格)だったでしょ。アルバムも発売。ブッチギリのアルバム。ここニッポンでもボーナス・トラック収録でCDが通常発売されてるってのがこのバンドのスゴさを証明してると思う。そしてこのシングル、B面でオーティスの“SECURITY”をカバー。もうわかったら?最高なんだよ、クリークは。
1998年発表「THE UPPER FIFTH/LYIN' TO YOU」品番DR067。ジャケットの右隅に『IF YOU LIKED MAKIN' TIME YOU'LL LOVE THIS BAND』って手書きのシールが貼ってあるんだ、俺の盤には。おそらく英国のレコード屋のオーナーが宣伝文句として貼ったんであろう。もちろんメイキン・タイムが大好きな俺だからこの盤もお気に入りになった。
1999年発表「THE APEMEN/LUCKY IN LOVE」品番DR071。大好きなバンド、ジ・エイプメン。1stアルバムが最高だったんだけどそれから3年後のシングル。「成長したな〜」って感慨にふけった思い出がある。

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