「おまえオランダ娘になりたいけ?」
「はぁ?」
「おまえは お・ら・ん・だ・む・す・め になりたいけ?」
「はぁ?オランダ娘?なにそれ?」
「まぁいいや。連れてってやるよ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ここだよ」
「はははは。なるほど蘭屋ね。ケーキ屋さん?」
「たぶんそうだら。先々週にオープンしたばっかしなんだよ」
「ふうん」
「ずっと気になっててね。夢が叶ったってわけさ」
「おぉ色々あるねぇ〜センベイとかもあるじゃん」
「なに買う?おれモンブラン」
「ん〜〜〜〜あたしもモンブランでいいよ。そぉいやぁ透ちゃんはモンブラン好きだって言ってたもんね」
「まぁね。モンブランに関しちゃぁちょっとうるせぇぜ、おれは」
「あぁ〜このシュークリームも美味しそう」
「んじゃぁ買うか。お兄ちゃん、モンブラン2個とシュークリーム2個」
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「なに飲む?」
「紅茶ある?」
「あるよ」
「んじゃぁ紅茶で。ハチミツある?」
「あるよ」
「んじゃぁハチミツちょびっとだけ入れて」
「はいは〜い」
「んじゃぁ喰うか」
「そうね」
「まずはモンブランからだな」
「そうよね」
「ん〜〜〜〜これは核シェルター・モンブランってんだ」
「なにそれ?」
「クリがケーキの中に格納されてるから」
「なるほど。でもさすがだね、透ちゃんは。ケーキと核シェルターを同一に考える発想ができるなんて」
「あったりめぇよ。この世に存在するすべての物はつながってんのさ」
「へぇ〜〜〜そんじゃぁ、ここにある透ちゃんがプレゼントしてくれたビートルズの赤いジャケットのアナログ・レコードとこのハチミツ入り紅茶もつながってるって事?」
「あったりめぇよ。いいかい?リンゴ・スターはなぁ紅茶が好きだったんだ」
「だって全員イギリス人じゃん、ビートルズって。全員好きだら」
「いやいや、特にリンゴは紅茶まみれだった。らしい・・・」
「うそくせぇー」
「おんながそんなハシタナイ言語を活用するんじゃぁありません!そしてリンゴは」
「話続くんだ」
「アップルティーが好きだったらしい。紅茶にリンゴを混ぜる・・・リンゴ擦ったぁ〜」
「なつかし・・・そんなコマーシャルあったね」
「そして」
「そろそろオチでしょ」
「この究極のビートルズ・ベスト盤、赤盤青盤が1962〜1966と1967〜1970で分かれていて、なぜ前期が赤色で後期が青色になったかと言うとだね」
「きたきた」
「実は当初は前期が青色で後期が赤色の予定だったんだ」
「そんで」
「当時のレコード会社の担当者が言うたわけさ」
「なんか訛り入ってきてない?」
「あのな、ビートルズがな、あんなん売れたんは、初期の努力のタマモノや。そんなん時期を青色なんて青臭いわ」
「そりゃぁアカんわ」
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「このモンブランはダメだね。これ何?底に張り付いてるビスケットの固まりみたいなの」
「タルトでしょ」
「バッカ野郎っ!いいかい?ケーキってのはなぁ」
「はいはい」
「甘〜いクリームとスポンジ部分との調和なのだよ」
「はぁ」
「クリームばっかに力入れたってダメさ。ギターソロばっかり上手くてもバッキング・ギターに戻った時にボーカルを生かす弾き方ができねぇ奴がダセぇギター弾きって言われるように」
「やっぱりギターの話になったね。シュークリームも食べようよ」
「おぉそぉだな」
「はい」
「ありがと。ん〜〜〜〜〜〜ダメだこりゃ。クリームは美味いよ。でもダメ」
「どこが?」
「これ見てみろよ」
「うわぁ〜すごいっ。シューの中にクリームぎゅう詰めじゃない。得した気分よね」
「だからおまえはダメなんだよ。量で損得を決めるなよ。味が重要だろ、食事は。いやいや味が重要と言うよりも味を楽しむって感覚が重要なんだ、食事ってのは」
「それでこのシュークリームはどこがダメなのよ」
「いいかい?シュークリームってのはなぁ、柔らかいシューの部分と甘いクリームともう一つ、シューの中にできた空間。これが重要なんだよ。ガブリって食いついてシューの味を楽しみながらパフって感じでシューの中の空間を楽しみながらクリームに到達する。そして口の中でミックスして味わう。一曲ん中でギターが延々鳴ってるのもいいが、そんだけじゃぁつまらんよな。間だとかさ、タイミングだとかさ、カッティングだとかさ、そんなところで音ってのが生きてくるんだと思うなぁ。ソウルってのは言語だけでの表現であって色や形や物体としては存在してないけど、確実に存在してるのがその間だとかタイミングだとかカッティングって場所だと思うよ、おれは」
「開店したばっかりのあの店、まだまだ甘いなって事ね」
「ケーキ屋だけにね」
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オランダはNetherlands(ネザーランズ),Nederland(ネーデルランド),Holland(ホーランド),Dutch(ダッチ)なんてな感じで色んな呼び方があるみたい。
「おまえオランダ娘になりたいけ?」って透ちゃんが彼女に言った言葉はもしかして・・・
「おまえをダッチ・ワイフにしたい」・・・そんなそんな・・・そんな・・・。
2004年発表、Zi:LiE-YAのアルバム“電光石火”。8曲目に『ネーデルランドの恋人』収録。いわゆるダッチワイフとの生活を唄った歌。この下ネタの世界はキクさんの曲が持つ重要なポイント。重要だけど単なるポイント。彼は、そっから180度回転した様なロマンチックな世界だってお手の物なんだぜ!
11月1日(土)
浜松/G-SIDE
☆Zi:LiE-YA , KiLLER Q , EVERREADY , THE SLICKS
☆開場/開演 18:00/18:30
☆前売\2500当日\3000(1d別)
ジライヤの新作“太陽の讃歌”レコ発。

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