☆ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの絵は不思議だ。
☆いつだったか印象派時期の絵画を集めた展覧会に行ったんだが一部屋に並べられた展示品の中でゴッホの絵だけが異様な光を放っていたんだ。色彩的に。デッサン的に。人間で言うところの存在感か。
☆英語圏の人間が彼、ゴッホの絵を観たとしたら「パワフル!」とか「ストロング!」とか「ワン・アンド・オンリー!」なんて言葉をペラペラ、英語でまくしたてるんだろな。
☆「パワフル」ってのは力一杯って事か。ゴッホはバーベル持ち上げてたのか。よいしょ。鉄アレイ握ってたのか。にぎにぎ。
☆「ストロング」ってのは強力って事か。ゴッホはスクワットで下半身強化してたのか。じょげじょげ。天井から吊り下げたサンドバッグを打ち込んでいたのか。どすどす。
☆「ワン・アンド・オンリー」ってのは世界でひとつだけの花って事か。ゴッホはアイドル・グループの一員だったのか。すますま。フラワー・ムーブメントのあだ花、ヒッピーだったのか。らりらり。
☆彼が描いた数々の花の絵がある。ヒマワリは大勢の人が(ゴッホの代表作として)認知している作品であるが他にも色々あるんだよ〜ん。
☆アイリスという花を描いた絵がある。球根花である。彼が描いたその花の葉は緑色の日本刀のようである。ズバっ!一刀両断。歯に衣着せぬ切れ味はまるで鋭いギター・カッティングのよう。
☆「そんなこと言ってたって実際その絵を眺めながらその音聴いてみなくちゃイメージできましぇ〜ん」
☆そんだったらゴッホの画集を観ながらシーナ&ザ・ロケッツの“I WANNA BE LOVED”をお勧めする。この曲はジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズのカバーだよん。
☆ゴッホの描いた絵を観ていくと“模写”というスタンスで描いている作品にいくつか出会うの。音楽で言うカバー・バージョンに近いかな。リスペクトあってのカバーって事ね。
☆「いいものは真似したい、手に入れたい」っていう欲張りな気持ちや好奇心がゴッホには旺盛だったんだと思うなぁ。
☆そして「ワン・アンド・オンリー」。誰にも真似できない、ぱっと観ただけで「これゴッホ!」って解かっちゃうようなインパクト。上手いとか達者とかではないレベル。オリジナリティ。
☆シーナ&ザ・ロケッツでギターを担当しているのが鮎川 誠。
☆彼のギターは「パワフル!」「ストロング!」「ワン・アンド・オンリー!」まるでゴッホの絵みたい。そして「スピード!」。速度を計測する数字ではないスピード感が彼のギターの持ち味。さらにバラードな曲では流れ星みたいなギターを弾く。淡いけどくっきりしたギター。ゴッホの作品で言うなら“糸杉と星の道”とか“星月夜”。
☆ゴッホの絵をよく観てみると油絵の具がてんこ盛りだ。最初に塗った絵の具が乾く前に次々と別の色を重ねていったんだね、きっと。せっかちだったのか。気が移ろいやすかったのか。スピード感。
☆もしあなたが住んでいる街やその近辺の街で《ゴッホ展》なるものが開催されていたならば、すぐにそのドアを押してみよう。
☆もしあなたが住んでいる街やその近辺の街で《シーナ&ザ・ロケッツ GIG》なんてな告知を見つけたならば、すぐにそのチケットを購入してみよう。そしてその日にライブハウスのドアを押してみよう。
☆扉なんて開けなければただの境界線にすぎないんだよん。
2000年発表、シーナ&ザ・ロケッツのアルバム“ROCK THE ROCK”。A面6曲目に『I WANNA BE LOVED』収録。

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