「はいはい、いらっしゃい。どこまで?」「市内のストランド・パレス・ホテルまで」
「あいよ」「よろしくね」
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「どこから来たんだい?」「ニッポンだよ」
「バカンスぅ?」「いやいや10年間働いてた会社を辞めてね。いい機会だから大好きなイギリスに行ってみようっ!って思って来ちゃった。次の仕事、決める前にね」
「グッド・アイディアァっ!うん。いいと思う。人生なんて誰からも指図されるもんじゃぁないと思う。自分で決めるもんさ。まぁ友達は大事にしないといかんけどな」「あぁ〜俺と一緒じゃん、その考え方」
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「お前は昔の会社でボスだったのか?」「えっ?なんでっ?」
「だいたいニッポンの観光客はリッチな感じだぜ」「あぁ〜そぉなんだぁ。俺はボスじゃぁないよ。会社辞めてるし」
「そぉだよなぁ。おめぇはそんなツラでもねぇしなぁ」「うるせぇっ!黙れっ!」
「あはははは」「アハハハハハハっ!」
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「ロンドン市内はどこ行くんだ?」「美術館とかフリー・マーケットとか・・・」
「マーケットだったらポートベローへ行け!あすこはいいぜっ!ポートベローだ」「あっそぉ。ポートベローね。行ってみるよ」
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「いやぁ写真で見てたけどロンドンってホントに赤レンガの家が多いね」「そぉかねぇ?ニッポンじゃぁ赤レンガの家は無いのか?」
「地震が多いからね」「あぁ〜そぉ〜かぁ。お前は自信があるんだ」
「いやいや、違うよ。その自信じゃぁなくって、地震」「いやぁ俺が言いたいのはなぁ、お前はお前自身に自信があるんで、その自信で地面を地震の様に揺らしたいって思ってんじゃぁねぇのか?って事さ」
「あんたホントにイギリス人?」「何で?」
「ボブ・ディランみたいに韻を踏んでるぜ。しかもニッポン語で」「マジぃ?んな事ぁ知らねぇよ」
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「ところでいつ帰るんだ?ニッポンへ」「5月26日だよ」
「最後のホテルは?」「ヒースロー空港の近くだよ」
「俺がお前を最後の宿に連れてってやるぜ」「マジぃ〜っ?」
「ホントさ」「グッド・アイディ〜ァっ!」
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「英国⇒仏国⇒蘭国の順番で廻って26日にユーロスターでウォータールー駅に着くんだよ」「何時頃だ?」
「ちょっと待ってよ・・・・・・えっとねぇ午前11時20分頃だよ」「んなら11時過ぎにウォータールー駅で俺は待ってるよ」
「ありがと」「んでお前の名前は?」
「トオル ウエムラだよ」「ちょっと待ってよ。ええっと“TAUL WEMLLER”っと」
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「そんじゃぁまたね。5月26日にウォータールー駅で」「うん。ありがと。いい旅を。ポートベロー行けよ」
「あっ!そぉだったそぉだった。忘れてた、あはは。んじゃバイバイ」「バイバイ。おっとションベンションベン。ストランド・パレス・ホテルの便所借りるぜ」
「あはははは」「アハハハハハハっ!」
写真は正直だ。右下に98年5月20日って記されてる。
4月中旬からの旅行スタートだった。「まずはウォータールーの近くで」って選んだのが“ストランド・パレス”ってホテルだったの。んでも雨の日が多くて憧れのウォータールーの夕焼けは見れなかったんだ。4月は。英国内をパレードしまくってロンドンに戻った5月19日か20日だった。晴れた日でね。ボクは実家のお母さんから借りたキャノンのキャメラでパチパチパチパチ。
1967年発売、THE KINKSのアルバム『SOMETHING ELSE by THE KINKS/THE KINKS』。B面6曲目に“Waterloo Sunset”収録。

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