独り暮らしを始めたばっかの頃の話だ。
買ったばっかの炊飯器で炊飯した。米粒を食べれる状態の白米にしたと言う事だ。米の研(と)ぎ方も実家生活最終期にお母ちゃんから教えてもらったんだ。小学生・中学生時代の林間学校・教習で先生から教えてもらってったって、そんなの忘れてるよ、当然。女の子やボーイ・スカウト演ってた奴なんかが得意になって研いでたはずだし。
んで、成人してから本格的な米研ぎ人生スタート。研いで研いで研ぎまくれっ!米粒を。それを買う為の金銭感覚を。生活費捻出スタイルを。そしてナイフを持って立ってた。青年の詩。知らん間にボブ・ディランみたいな顔付きになってたぜ。あらゆるもの研ぎまくってたら。
ビックリしたね『ピピっ!』って炊飯器、鳴って、ふたを開けたら白米、ホッカホカの。湯気も出てるよ。ご飯が炊けた時のあの匂いって『家庭』の匂いなんだね。それで俺が一日でホームシックに掛かったわけ、あるはずない。掛かるはずないよ、好きで出たんだもん、実家。
『ねこまんま』とかっつってね、煮干とか、ふりかけとか、かつを節とかと生卵をミックス。醤油も忘れちゃならぬ。そんなのを御馳走呼ばわりして食事を楽しむ事を覚えた。自給自足生活を。
ある日、スーパーマーケットで『混ぜご飯』みたいなのを簡単に作れる商品を見つけた。買った。ずぅ〜っとテレヴィジョンのコマーシャルなんかで拝見してたけど遂に購入。
「ご飯炊く時に一緒に入れるんだぁ!」ってね。感心しながらの夕食準備だったの。
ビックリしたね『ピピっ!』って炊飯器、鳴って、ふたを開けたら混ぜご飯、ホッカホカの。「きっと『栗ご飯』『芋ご飯』『たけのこご飯』もこの要領だっ!」って勝手に真似してみたら、やっぱそうだった。
一つの事で二つの事を同時進行。これは”要領がいい ”とかどうとか言うよりも時間短縮、手間が省けるって事だと思う。料理を作ったとして要領よく料理したつもりでも、味がイマイチだったら意味無いもんね。


ギターを弾かない人から見ると、弾ける人は『羨(うらや)ましいっ!』って感じみたいだ。よくそう言う話を耳にする。ギター弾きながら歌を唄うなんて『すごいっ!』って感じみたいだ。
ジミ・ヘンドリックスと言う男。そんな世界中で羨ましがられる存在のギター弾き達からも更に羨ましがられる、憧れ続けられる、真似され続ける存在。
一つの事で二つの事を同時進行。ギター弾きながら唄ってる。いや、唄いながらギター弾いてるって言うのかな?研ぎ澄まされたギターのフレーズと唄を同時に。要領がいいでも、時間短縮でも、手間を省くでもなくね。
自給自足の彼の生活、それこそ≪セックス・ドラッグ・ロックンロール≫だったんじゃないかな。全部、一緒に炊飯器ん中に入れて炊飯してたと思う。
『ピピっ!』って炊飯器、鳴って、ふたを開けたらレコード、ホッカホカの。彼の音源のあの匂いって『ブルース』の匂いなんだね。

0