自分の車を持ってる人も持っていない人も、自動車運転免許証を持ってる人も持っていない人も、僕の話を聞いてくれ。笑い飛ばしてもいいから。
ミニというクルマに乗っていた時代があったんだ、僕には。英国にあこがれて。英雄にあこがれて。
それはそれは、人目をよく弾いた。違ったっ!人目をよく引いたんだ。目立つって事だね。ステージでのスポットに当たってる事に慣れてしまっている身としては、クルマに乗ってるだけでステージ上に立ってる気分なんだ。太陽の光が俺のスポット。月の光が俺のスポット。街の街燈の光さえも。
そんな感じでクルマに乗るのが好きだった。当ても無くドライブし続けるのが大好きだった。ロックン・ロール・ミュージックを鳴らしながら。
ある年のクリスマス・イブだった。
いつものようにドライブ。イブに夜のドライブ。無信仰だからイブも関係ないのさ。相手が居れば関係あるのさ。それがニッポン。
クルマが止まった。幾多の故障経験済み。簡単だよ。JAFを呼んだんだ。携帯電話もない時代の話さ。近くのたばこ屋の公衆電話さ。外は雨。まるで昭和の時代の映画のワン・シーンみたいにたばこ屋の公衆電話から大好きな相手に電話したのさ。JAFに電話したんだ。
「40分っくらい待ってくれ」と先方。
40分の間、クルマで待機。外は雨。傘を差した女のコが通り過ぎる。片方の手にはケーキ屋の小箱。部屋では愛する彼氏が待ってるのさ。
俺はJAFを待ってるのさ。
「TH eROCKERS / SHAKIN'」
1981年発売の3rdアルバム。
”月も星も 街燈の光さえ 週末だけは 俺のシグナル 午前零時のストリート・ヒーロー モノクロの街は 粋なハリケーン 涙 見せる夜を かりたてて 深夜の街は モーターウェイ”これは、このアルバムの最後の曲『涙のモーターウェイ』の唄い出しの部分。
博多地区の音楽を「めんたいロック」って呼ぶようだ。激しかったり、黒っぽかったり、派手だったりするんだけど、忘れちゃいけないのが、この曲のようにロマンチックな部分も「めんたいロック」は持ち合わせているって事さ。僕は影響を受けている。

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