1曲目始まった「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」。イカレポンチ、キースの登場だぁ〜!もう60歳過ぎてるだら?ドクロの指輪、外しなよっ!チャーリーっ!元気?ロニーっ!お身体、お大丈夫?ミックっ!なんで、あんたはそんな健康体?って感じさ。トムは大笑い。嬉しすぎて大笑い。「わぁぁ〜!演ってる演ってるっ!」。感動で大泣きなんてのとは大違い。トムはストーンズ初来日の初日を東京ドームで体験している男。1990年2月14日の事さ。トムはその時、2曲目途中まで号泣してた。ひたすら泣き続けた男。マジ泣き。そんな男が今回は大笑い。年齢と体験で人生は変わるのか?変わるね。変わると思う。なんかのきっかけでどうにでもなるのさ、人生って奴は。自分で決めるのがポイントだと思う。悩む時が来たって自分で決めた事なら納得できるら。「やいやいやい。失敗したなぁ〜。あっはっはっはぁ〜」って。要は気の持ち様。なんでも笑って済ませたい。トムはそう考える男。
演るのを待っていた。最新アルバムからの曲が演奏されるのを待っていた。待っていた男。それはトム。トム・ウェイツ。トム・ウェイツの曲とあの声を聴いて以来、トムはタバコ吸いに変身した。人生、きっかけでどうにでもなるって事さ。そして数曲後、最新アルバムの曲をストーンズ披露。「シンキョクヤルヨ」って言うミックの饒舌日本語の後に。トム大狂喜。そしてGIGも半ばに差し掛かった。「うわぁ。イヤな予感、イヤな予感がする」トムは思った。予感的中。「ミス・ユー」が始まったのだ。トム大嫌い、ミス・ユー大嫌い。「あれっ?」トムは思った。「俺は幽体離脱してるのか?俺の身体がステージに近づいている。イカレポンチに近づいてるぜ」。うんにゃ。そうでは無かったのだ。噂通りにステージが迫ってきたんだ。動いてきたんだ。トムの方へ。ハックの方へ。「うわっ!うわっ!うわっ!」。トムとハック、隣席の野郎共女郎共なぎ倒し、ケリ食らわせ ”Bステージ”付近へダッシュ!もう猛ダッシュ!「来た来た来たぁー!」。6メーター90センチメーター先に奴らが。奴らが居るんだよ。「奴らじゃわかぁんなぁ〜い」って?ボケっ!ストーンズだよっ!
ふにゃにゃにゃ。悶絶。タジタジ。「うわっ!本物!うわっ!キース、俺にウィンクした(感じがする)っ!」メロメロ。「僕もうメロメロ。マーボー・ハルサメの具になってもいいぐらい」。「チキショウっ!俺の背丈が5メートルだったらキースと握手できたのに」。これはトムの後日談。
短い時間の出逢いをいとおしむ様に移動ステージは母屋に戻っていった。誰でもどんな物でも、お母ちゃんの胸に戻りたいもの。自分の生れ故郷に戻りたいもの。
こんな流れでGIGも終盤に差し掛かっていくのでありました。往年のヒットナンバー連打。イチローもタジタジ。ゴジラもゴメンナサイって言う感じ。
「ペイント・イット・ブラック」が始まった。終わった。ミックしゃべる。「ナぁゴぉヤぁサイコぉウー!ダギャぁ!」なにっ?! おいっ!ミック、” だぎゃぁ”って名古屋弁しゃべってるぜっ!ぎゃぁ!「お願いです、ミックさん。俺達の街にもカッコイイ方弁ありますっ!ダラぁっ!ダニぃっ!って言えばいいんです。言い易いでしょ。えっ?指南料?とんでもございません。私達の方でお支払いしたいくらいです。ライブハウスあるか?って。ありますとも。ちょうどいいハコありますよ。ツアー前のシークレットGIGに打ってつけのお店があります。来週15日に僕等もGIG演るんですけどね。トキオからもイカしたバンド来るんですよ」なんていう事を妄想しながらGIG後半を堪能したのだ、トムとハックは。
GIGが終了しトムは思った。「カバー曲、演んなかったな。あの曲もあの曲も演んなかったな。もうちょっと最新アルバムの曲、演った方がいいんじゃない?それに俺はサプライズを期待してるんだ。ビックリさせられる曲が演奏されるのを期待して待ってるんだ。もちろん今回初めてストーンズ観た人には最高の出来事であってほしいけどね。墓場まで持ちかえるような思い出であってほしい。また来てね、ストーンズ。俺は待ってるぜ。ビックリさせてくれ」。
帰りのイカダの上でトムとハックはいろんな事をしゃべりながら、戻っていった。あの島へ。
おわり。
2005年発売。THE ROLLING STONESのアルバム『abiggerbang』。2005年秋に発売なのに俺は2006年初冬に購入。なぜならアナログで欲しかったから。聴きたかったから。芸能生活40年ともなると、ストーンズ・ファンなんてみんな「俺はあの時代が好きだった」とか「私はこの時代が好きなの」とかって自分の物差しで測っちゃう。俺も測る。でもこの盤は傑作だと思う。だから、観に行く事にした。「いつ死ぬか解からんで今のうちに観ておこう」なんて気持ち、俺は持ち合わせてないな。

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