ー成田亨の造形芸術とその後の怪獣美術ー
と、言う展覧会へ行ってきました。
http://mitaka.jpn.org/calender/gallery/
ご存知の方はご存知だと思いますが、晩年の成田氏と某製作会社との関係が、あまり良いものでは
無かったため、このような形での展覧会は難しいのでは?と勝手に思っておりました。
成田氏も亡くなられてから5年経ち、昨年は「ウルトラマン40周年」と言うことでいくつかの
記念展もあり、さすがにそこで成田氏の存在をないがしろにするわけにもいかなかったようですが
それでも氏が遺した功績のわりには、まだまだ物足りない扱いだったように思います。
なので、今回の展示にはかなりの驚きと喜びを禁じ得ませんでした。
成田氏の「怪獣デザイン」から個人的な「純粋芸術」、そして晩年テーマとして追い続けたと言う
「鬼」まで、広範囲に渡っての作品が展示されています。
中でも個人的に一番興味深かったのは「宇宙人の気配」や「宇宙人の影」と題された何点かの
作品で、平面の絵では無く、絵と絵を空間を持たせて重ねてあり、例えば奥に鏡が仕込まれて
いたり、向こうから宇宙人が覗いていたり、またレリーフと遠近法を利用した絵の組み合わせ
だったり、単に「怪獣デザイナー」としてでは無く「特撮美術」の監督としての発想と試みで
あろうと思われるものでした。
また「宇輪」と題された怪獣を始め、他にも名称がつけられていないのですが新たなる怪獣像や
宇宙人像を求めての習作と思われる立体造形物も幾つかあり、とても惹かれるものでした。
今回の展覧会が「”怪獣”と美術」と言うことからなのでしょうか、メカニック関連が少ないのは
少し残念でしたが「波間のMJ」と言う大判の油絵の迫力には圧倒されました。
嵐の直前なのか、暗〜い雲が低くたちこめた中、大きな波がうねる海。
その向こうに霞んで見ゆるのは、その機体より海水をしたたらせながら、今まさに翔びたたんと
する我等がマイティジャック号の勇姿!!
と言う趣きの作品です。写真は図録にも載っていますが、生で目の当たりにするのとでは
まったく違った印象を受けてしまいます。
とは言うもののこの図録はかなり豪華な装丁ですし、某出版社の解散もあって画集の復刻なんて
キビしい現状ではかなりかなり貴重な図版満載と言えるのでは無いでしょうか?
ロビーではこの図版以外には成田氏のデザイン画ポストカード(全8種)とポケットファイル
そして80年代後半、画集発行と同時期に行われていた展覧会の際に作られたポスター3種
(カラーのバルタン星人、ピグモンと線画のマイティジャック)が売られていました。
ちなみに図録の「協力」の一覧の中には某製作会社もありましたが商品のマルC記号(著作権
表記)は成田流里(成田氏夫人)になっていました。
さて高山良策氏のコーナーでは数点の造形用スケッチも展示されていましたが、主に個人の絵画、
立体作品であり、2001年の練馬美術館での大規模な展覧会で一度は目にしたものがほとんど
でした。
今回の展覧会の意図からしても、もう少し成田氏デザインのものを高山氏が造形したものも展示
して欲しかったと思うのは僕だけでしょうか?
高山氏が余技として製作したと思われる「ゴリとラーの操り人形」は初めて見ましたがとても
可愛らしいものでした。
このお二方に比べるとグッと展示数が減るのですが池谷仙克氏はデザイン画メインの展示でした。
「ツインテール」「グドン」と言う名怪獣のデザイン画もありましたが当時のオリジナル原画は
紛失してしまっており、再制作されたものなんだそうです。
近年、作られた「シルバー假面」のもありましたが敵が「蜘蛛」に「蝙蝠」とか・・・って
何だか「仮面ライダーみたいだなあ」と思ってしまいました。
今回の展示の中では最若手である原口智生氏の作品も少しだけ展示されてはいましたが、
「大魔神」や「グドン」(最近の作品に登場していたらしい)、「シルバー假面」と高山氏、
池谷氏絡みの作品ばかりなのは、しょうがないのでしょうか?
「怪獣の皮膚に触ろう!」と言うコーナーはちょっとデパートの催し物っぽくもありましたが
ちょっと面白かったですが。
それと「シルバー假面」に登場するらしい「マリア」と言うキャラクターのマスクが「尖った
パーマン」のように思えてなりませんでした。(笑)
ロビーでは「作る 語るプライベート映像に残る成田亨」と言うDVDを上映していました。
タイトル通り、生前の成田氏が展覧会でお客さんに作品の説明をしていたり、大江山にある
「鬼」のモニュメントの製作風景だったりするものでした。
プライベート映像と言うことで音声が不明瞭な箇所もあり、周囲でお客さんが声を立ててると
聞き取りにくいのですが、耳に手をあててなんとか聞き逃さないように頑張りました。
中で「ウルトラマン」の絵を指差して「名も無い宇宙人だ」と説明したり、ドラマ「ウルトラ
マンを作った男たち」の感想を書いた日記(?)を読み返し「嘘もいい加減にしろよなあ」とか
言うような部分もあり、そのような心情を知らなかった頃とは言え、渋谷のギャラリーで一度
御会いした時にせっかくお話出来たのに氏を不快にさせるような発言ばかりだったことが今でも
悔やまれてなりません。
(あと88年に大阪で大規模な展覧会があった事なんて知らなかったのもショックでした!!)
成田氏自身が怪獣のデザイン画とそのモチーフになったものの写真をコラージュしたものの
映像も見ることが出来ましたが「エレキング」そっくりの模様の昆虫の写真にはビックリして
しまい、それがバッタだったかトンボだったか、はたまたカミキリムシだったのかが思い出せ
ません!!(苦笑)
そして「ケムラー」の背中の甲羅が「蛾の触角」からの発想だったとは意表を突かれました!!
また「鬼」の製作に関して何度か「鬼」そのものの解説が字幕で付け加えられていました。
最初は何気なく見てた自分にも「鬼とは時の権力者の手によって中央から排除されながらも
戦い続けた者の事である」と言うのが強調されている事にこのDVDを編集した人の意図が
明確に伝わってくるようでした。
こんな貴重かつ重要な映像の上映の機材の操作を物販のおば・・・あ、いや、お嬢さんが兼任
されているのですがリモコンの使い方もおぼつかないのにはちょっと困ってしまいました。
(「直にボタン押したらいいのでは?」と提言したのでなんとかなりましたけど・・・苦笑)
たぶん、もう一度くらいは行ってしまいそうな気がしますが、その時にはちゃんと操作を覚えてて
くれるかどうかが心配です。


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