14年やった少年サッカーのコーチ・監督を2011年夏でおしまい。 でもサッカーからは目が離せない、離れられない。 サッカーをはじめとするさまざまを自分也の視点で思うままに好き勝手に書いていきます。

2008/8/29

fanta.123/夏合宿と怒声  少年サッカー親子奮闘記

 北京五輪の閉幕間際、「少年FC」恒例の夏合宿を行った。関東地方は厚い雨雲に覆われ、天気が心配だったが合宿地はウソのように雨雲が避けてくれて、また、夏の陽射しもいくらか和らぎ、合宿の三日間は絶好のコンディションに恵まれた。三男たち5年生は2チームと練習試合を行った。2チームとも技術がしっかりしていて、いい相手だった。試合結果は覚えていない。記録も取っていないし、スコアはまったく気にしなかった。私は子供たちのメンタル(アグレッシブさ)、声、プレス、攻守の切り替えばかりが気になっていた。
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 秋の大会は8人制で行われる。スペースのある中で子供の技量を伸ばす、少子化対策等が8人制で実施する理由らしいが、大きなお世話だ。4年生までの8人制を経て11人制のサッカーを組み立ててきたのに、サッカー協会には机上の理屈で変更しないでもらいたい。まあ決まったことは仕方ないが、ひとつ付け加えると、低中学年時の8人制と高学年の8人制は異なる。従来は、8人制は11人制のための準備と位置付けられた。しかし高学年の8人制というのは選手をセグメントすることになる。“多くの子供にサッカーを楽しんで欲しい”との協会のお題目とは異なるものである。そのことに気づいているだろうか...。いずれ小学校のサッカーは全部8人制にしていきたい意向らしいが、それは優秀なサッカー選手を育てる(いや、篩にかける)にはいいだろうけれど、サッカー人口は増えない。サッカー人口が増えないということはサッカー好きの底辺が少なくなることだ。日本代表の現状が続けば、日本のスタジアムは満員にならなくなるだろう。

 秋の大会のために、合宿の練習試合は8人制を重視した。すると心配した通り、“甘い”。プレス、攻守の切り替えは11人制以上に早く、激しくやらなければやられてしまう。自ずと「声」、すなわちコーチングも大切なのだが、そういう子は限られている。11人制に慣れて8人制に戻ると、攻撃も守備も人数が不足しているように感じるものだ。つまり、高学年の8人制サッカーは、よりフィジカル重視になる。それが過言であれば、スキルの前にフィジカルありき、だ。それがサッカーの本来であると言われればそれまでだが、それ故に自ずと子供は選ばれてしまう。選ぶのは私ではない。サッカーそのものだ。
 話を戻そう。11人制に慣れた子供たちは、頭を切り換えて、8人制ではいつもの倍動くことを意識しなければならない。だが、ウチの子たちはそれができないでいた。私は次第に苛立ってきた。ハーフタイム、試合の合間には同じ台詞を繰り返した。
「みんながもっと声かけなきゃだめだ。声で救えるぞ。DFは特にそうしないと、お前たちが辛くなるぞ」
「様子見するな。特に中盤の二人はもっと激しくボールを奪いに行かなきゃ」
「歩くな、絶対に歩くな」
「ボールを要求しろ」
 攻撃時のプレーは悪くなかった。シュートで終わられなかった次のプレーが大いに問題だった。前線も中盤もたらたらと戻るのだ。それをやっていたら、相手にひとり、ふたりスピード豊かな選手がいたらピンチに陥ることになる。苛立ちがますます募ってくる。

 合宿二日目の午後。午前中の練習試合を終え、昼食の後に5年生は4年生と8人制を行った。合宿参加者の中では互いにベストメンバーだ。最初の15分間、5年生は攻められっぱなしで、ボールを奪ってもまったくパスが繋がらない。サイドの人間がパスコースに飛び出していかないから、窮屈なのだ。よって自分で持ち込むプレーが増える。しかし突っかかることが再三再四。声はますます出ない。様子見は相変わらず。戻りは遅い、遅すぎ...。そうしているうちに4年生から1点取られてしまった。キーパーは大声で怒っている。私の苛立ちは限界に達した。
 点を取られ、うつむき加減でセンターサークルに戻ってくる7人(キーパー以外)に向かって私は歩いていき、ひとりひとりのケツを蹴飛ばした。
「なんのためにここまで合宿に来てるんだ。同じ事を繰り返すな。俺に言わすな」
 直後に15分間が終わり、私は8人をベンチ前に並べ、罵倒した。
 バカじゃねえか、お前ら。今日が大会だったらどうするんだ。春とまったく同じじゃないか。上手くはなったが強くはなってない。それは動きが足らないからだと何回も言っただろう。中盤は様子見するなって昨日から言ってるだろうが。FWはもっと動け、走って戻れ、休むのはそれからだ。何よりも声出せ。声が出せない奴はサッカーやるな。個人競技やれ。お前ら、俺がこう言うといつも返事だけは「はい」って言うけど、返事したならやれよ。その場しのぎの返事するな。声を出せないと思ったら「はい」って言うな。ここは学校じゃない。俺は先生じゃない。その場だけじゃ通じない。サッカーは必ず結果が付いてくる。プレーが証明するんだ。誤魔化すな。自分を誤魔化すな。俺はそれじゃすまさんぞ。言ってる意味がわからんなら合宿やめて家で漢字ドリルでもやってろ……。
 私は泣き出すまで怒鳴り続けた。どこかで火を付けなきゃならんと春からずっと感じていた。甘さ、緩さ、幼さが抜けない彼らに雷を落とすには合宿が最適だと思っていた。通常の練習時だと多少言ったところで、家に帰れば日常に戻る。サッカー以外の楽しみが転がっている。朝から晩までサッカーの仲間に囲まれた合宿は逃げ場がないからだが、これほどまでに絶好の機会が来るとは思っていなかった...。
 私が怒鳴った後、8人は涙を浮かべてベンチの横に黙って座り、次の試合を見ていた。他のコーチも付き添いの保護者も遠巻きに私をみていた。
 最後にもう一度、同じメンツで15分を一本やった。さすがに火が付いたようで、特に中盤の二人、エースと三男シンは歯を食いしばって走っていた。誰もが泣きそうな顔でボールを追い掛け、15分間で4点か5点取って勝ち、ホッとしたようだったが、子供tちに笑顔はなかった。

 宿舎のバスが迎えに来て、みんなが宿に帰る準備をしている中、私は8人にまた話した。
 やっと走ったな。やっと声を出せたな。やればできるんだよ。足下の技術はこれ以上、全体のレベルを上げるのは難しい。後は個々の問題。これからの練習はどうサッカーをやるか、どうやったら勝てるかなんだが、今のお前たちの姿勢だと強くならない。モノ足らないから怒るんだぞ。精一杯やっているなと思ったら誰が怒るもんか。もっとやれる、こんなもんじゃないと思っているから怒るんだ。俺はね、お前たちは区内でどこにも負けないと思っている。みんなが力を発揮できて、ひとつになったら絶対にどこにも負けない。だから腹が立つ。ちんたらやってたらむかついてくる。負けたくないだろう? 将来はプロ選手になりたいんだろう? 違うか? ずっとサッカーをやりたいんだったら、いつも一生懸命にやらなきゃ。それを忘れたら上達はないぞ。
 みんな涙を浮かべたまま、真面目に聞いていた。こんな顔、今まで一度もなかった。少しはこたえたらしい。
 みんな可愛い。性格はそれぞれだけれど、ひねた子はいない。素直ではない子もいるが憎らしい子はひとりもいない。みんなにいい大人になってもらいたい。普段は多少不真面目でも、やるときはやる、やるべきときはきちんとやる、そういう人間になってもらいたい。そのために私は、サッカーを通じて、少しでも役に立ちたい。だから必要ならば怒る。ひっぱたく。学校の先生ができないことを、親が目を瞑っていることでもやってやる。私は先生ではない。聖人君主でももちろんない。単なる適当な中年親父だ。だけれど、何が大切かは、ぼおっと大人になった連中よりも知っているつもりだ。伝えられるつもりだ。
 夏は子供を成長させる。食べ物を腐らせるほどの強烈なエネルギーが気を鍛え、普段にはない出来事が心を膨らませる。彼らのこの夏がどのように秋に現れるか、期待しているところである。

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