「おいしい」というのは、こういうことを言うのだろう。長野県駒ヶ根市内で、知人が「おもしろい定食屋を見つけた」と言うので、早速拝見に出かけた。福祉施設の調理を担当していた夫婦が、それだけでは物足りないと、開業したらしい。出されたメニューは、色とりどり!刺身や鳥のから揚げ、おでんなど、次にどれをと箸が迷うくらい。デザートは手作りのパウンドケーキ。小食の私のこと、普通なら半分ぐらいは残してしまうのに、自分で気づかぬうちに、ほとんどがなくなっていた。振り返ると、どの料理もが驚くほどスムーズに私ののどを通過していった。テレビの料理番組では、タレントがひと口頬張るたびに「おいしい!」と驚きの声を上げるが、本当の「おいしい」はそんなものではない、ということがよくわかった。「気づかぬうちに、自然にのどを通過した」。ああ、おいしかったのだな、と振り返る。こんなに豪華な料理だからと、千円札を何枚か取り出そうとしたら、お代は「800円」!これでは儲からないんじゃないの、と心配になった。やっぱり福祉の世界に居たから、ビジネスの世界に入っても「福祉」をやってしまうのかなと、同じく福祉で飯を食っている知人と笑いあったものだ。
話はこれでおしまいではない。駒ヶ根での仕事を終えて帰ろうというときになって、夕食のことを思い出した。またまずい駅弁を食べなければならないと思ったら、気が重くなった。「待てよ、もしかしてあの定食屋、作ってくれるんじゃないか」。知人に電話で交渉してもらったら、これが「ピンポン」!しばらく電話口で考えた末、「こんなことは普段はやっていないんですが…」結局「作ってみましょう」となった。
夜の「スーパーあずさ」は、いつもビジネスマンで満席に近い。お楽しみの「ディナー」を開けてみてビックリ!4皿も入っていた。小さなテーブルにはおさまらず、たまたま隣の席がまだ空いていたので、そこにも並べてこっちの皿、あっちの皿と箸を移動させる。うれしさよりも照れくささが先に立ったのは仕方がない。これで値段は「800円」。これじゃ儲からないよ…本当に心配になってきた。心配しながらも、「同じ(福祉という)釜の飯を食った」者同士の連帯感がジワーッと胸の中に広がっていくのを感じた。

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