信頼
医師が来たいと思う地域に
「ハコ物をつくったからといって医師が集まるわけではないんですよ。
大切なのは、医師が来たいと思う地域かどうか」
「大学の医局に医師の派遣を頼るのではなく、地域で医師を育てないと」
午後8時。
千葉県東金市の県立東金病院の院長室では、
「地域医療を育てる会」の藤本晴枝さん(43)と平井愛山院長が、東金市と九十九里町が設立をめざす「地域医療センター構想」について意見を交わしていた。
当初は、山武地域の2市4町での運営を想定していたが、予算や病床数をめぐって自治体間の調整がつかず、2度にわたり計画は頓挫。
今年10月、県が1市1町で運営する試案を示し、現在も議論が続いている。
数日後の夜、九十九里浜に近いホテルの会議室に開業医や薬剤師、看護師ら50人が集まった。
糖尿病の最新治療について知ってもらおうと、平井さんらが企画した研究会だ。
会議室には、動脈硬化の検査で使われる超音波診断装置が運び込まれ、画像がスクリーンに映し出された。
「ここがプラーク(コレステロールの塊)。
血管に狭窄(きょうさく)があれば、モザイクが出ます」。
検査士が説明する。
「この方法は患者への負担が少ないのが特徴です。
血中のコレステロールだけでなく、血管そのものをみることで病変を見つけるのが最近の流れです」
と平井さんが解説した。
山武地域で平井さんが始めた研究会は、いま、さらに広がっている。
少しずつだが、開業医や住民の間に、糖尿病をはじめとする生活習慣病を地域ぐるみで予防していこうという意識が浸透しつつある。
「わかしおネットや電子カルテなど、ITは道具に過ぎない。
大切なのは、医師、薬剤師、住民の人と人とのつながりです」
「他に質問がなければ、今日は先生にプレゼントがあります」
10月末の若手医師の研修会。
約1時間の講義と議論が終わると、藤本さんは研修医の蔡明倫さん(28)に1枚の色紙を手渡した。
日本内科学会の認定医の資格を取得した蔡さんに、サポーターのみんながお祝いや励ましのメッセージを書き込んでいた。
「蔡さんなら合格すると思っていました」
「ありがとうございます」
蔡さんは照れくさそうに言い、会議室に拍手が広がった。
(2008年11月15日 朝日新聞「患者を生きる」813)

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