県支援に不安 負担増を警戒
救急体制確保へ県は指導力を
東金市、九十九里町、大網白里町で進める地域医療センター建設計画が、2度
の頓挫で先行きが不透明になっている。
地域の中核となる高度救急医療機関への期待
から、計画の実現を求める住民の声は根強いが、県の支援態勢への不安から足踏み
が続いている。(羽田和政、赤津良太)
■反対相次ぐ
6月13日の大網白里町議会。センターの中身を協議する準備組織の費用として、約55万円を盛り込んだ補正予算案が否決された。
計画を進めるには、既に可決した東金市、九十九里町と足並みをそろえる必要があったが、今年2月に山武市などが離脱したのに続き、計画は再び白紙に戻った。
否決に先立つ討論では、
「1市2町で本当に(センターを)維持できるのか」
(北田雅俊議員)など、主に財政的な理由から反対論が相次いだ。
傍聴席で見守っていた自営業加藤光男さん(49)は
「命の話をするのが筋なのに、カネの話ばかりだ」
と憤りを隠さない。
今回の否決について、町長選などを巡る感情面のしこりから、センター計画が「政
争の具になった」と見る向きが多い。
ただ、県の具体的な支援が見えない中、将来の負担増への警戒感が議会や住民に根強くあるのも事実だ。
■空白を懸念
「(1市2町を含む)山武長生夷隅の保健医療圏には、高度の救急医療を担う
第3次救急医療機関がない。
県を挙げて何とかしなければという思いが大変強い」
堂本知事は6月26日の県議会答弁で、救急医療の空白が長期化することへの
懸念を示した。
実際、県はこれまで
「県は包括的支援を行う。
現在の市町の財政負担を超えないように、最大限の財政支援の検討に着手する」
との意向を1市2町に伝えてきた。
1市2町は、国保成東(山武市)と町立大網(大網白里町)の両病院運営に、年間
計約5億円の負担金を拠出している。
センターの建設費を含め、これを上回る財政負担が生じた場合、県はどこまで支援できるのか。
健康福祉政策課は
「具体的な財政支援の話は、センターの中身が決まってからだ」
と慎重な姿勢を崩さない。
■膨らむ赤字
県は2004年4月にまとめた県立病院将来構想で、「地域完結型の医療」を打ち出した。
東金病院の廃止方針とほぼ同時に、地域医療センター構想が浮上するが、東金病院は施設の老朽化と医師不足による経営悪化に直面しており、
「県は“お荷物”を押し付けた」との批判は今も絶えない。
県病院局によると、80床の東金病院は07年度決算見込みで約8億円の赤字。
約5億円を県の一般会計から繰り入れており、民間ならば約13億円の赤字だ。
総務省公立病院改革懇談会座長で公認会計士の長隆氏は、
「100床で2億数千万円の赤字が公立病院の平均。
東金病院は全国でも最悪に近い経営状況だ」と指摘する。
原因は民間に比べて高い人件費にもある。
これらの問題に有効な処方せんを示せなければ、センター経営は東金病院の二の舞いを避けられない。
長氏は
「内科救急に特化すれば無駄が省ける。
事業主体は県も入れた地方独立行政法人とし、地域医療の確保に責任を持たせる。
人件費を抑えるため、職員の身分は非公務員にすべきだ」
と提言する。
■県は前面に
2度の破談で明確になったのは、複数の自治体が絡む一部事務組合に協議を任
せれば、計画を前進させるのは難しいということだ。
市町村合併を見ても分かるように、自治体間の利害や首長、議会の思惑が絡む
問題では、県の強力な指導力が必要となる。
まして住民の命にかかわる救急医療だ。
県は「後方支援」に徹した従来の姿勢を転換し、センター経営の将来予測を示すなど、地域の不安解消に向けて主体的な取り組みが求められている。
(2008年7月2日 読売新聞)