手術に欠かせない麻酔科医が、全国の公立病院から次々に姿を消している。
医師不足による激務が敬遠されたためで、救急患者の緊急手術ができなくなるケースが相次ぐ。
専門外の医師が麻酔を担っている医療機関も多く、医療の安全が脅かされる事態が進行している。
激務が限界 次々退職
緊急手術 やむなく休止
愛媛県東部の救急医療の拠点、東予救命救急センター(新居浜市)は3月末までの2年間、麻酔科の常勤医が1人もいなかった。
3人いた医師の1人が家庭の事情で辞めると、残る2人も相次いで退職。
救急患者の対応などで、36〜48時間の連続勤務が繰り返されたからだ。
このため同センターは一昨年、緊急手術を休止。
昨年は麻酔経験がある外科医らが麻酔をかけたが、呼吸管理が難しい肺外傷や子どもの患者は、50キロ以上はなれた松山市まで転送せざるを得なかった。
愛媛大に要請し、4月から常勤医2人が配属されたが、武田哲二センター長の不安は消えない。
「以前のような激務が続けば、同じことが繰り返される」
麻酔科医は手術の際に麻酔をかけて患者の痛みを抑えるとともに、呼吸や血圧、心拍など患者の全身管理を担う。
法律上、医師なら誰でも麻酔をかけられるが、日本麻酔科学会は安全面から学会の認定医が行うよう求めている。
だが、同学会の03年調査では、一般病院の手術麻酔のうち、麻酔科医がしていたのは65%で、残りは外科系の医師などだった。
島崎修次・杏林大教授(救急医学)は
「24時間、緊急手術を求められうセンターには複数の麻酔科医が必要だが、常勤医が1人だけという施設は珍しくない」と嘆く。
大学病院の麻酔科が崩壊した例もある。
三重大では一昨年、激務に反発した麻酔科の医局員が一斉に離脱。
最大で17人いた常勤医は一時、主任教授だけになった。
今も手術を伴う救急はすべて受け入れを休止。
手術の2〜3割は専門外の医師が麻酔をかけざるを得ない状態だ。

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