Q ヒマラヤの氷河はなくなってしまう?
A おそらくNo、なくなりはしないでしょう
UNEP(国連環境計画)やIPCCのレポートでも、「この先数十年でヒマラヤの氷河はなくなるだろう」とされています。
追記:大元はWWF(2005)のレポートです。ヒマラヤの氷河面積の80%が2035年までに消失すると書かれています。
不思議なことに、このテーマを扱った科学論文はほとんど見あたりません。「温暖化が進んだ場合、世界中の氷河の縮小が海水準にどんな影響を与えるか」という論文はありますが、個別の山域で氷河がどうなるか?というテーマを扱った論文は稀で、スイスアルプスぐらいしかないんじゃないかと思います。
cozyも特に解析をしたわけではないのですが、ちょっとした思考実験で検討はできます。
繰り返しになりますが、氷河は氷の固まりです。その収入である降雪は標高が高いほど多く、支出となる融解は標高が低いほど多くなります。ある一年間の間に降雪量>融解量となる領域を
「涵養域」といい、降雪量<融解量となる領域を
「消耗域」といいます。
この涵養域と消耗域をわける標高は、
「平衡線」といい、氷河の状態を推し量る上で非常に重要なキーワードです。
が、これを毎年毎年測るには、先に書いたステーク法による観測をしなければならず、とても大変。だもんで、ヒマラヤの氷河の
「平衡線」がどうなっているか、は少なくとも観測ではわかっていません。

温暖化にせよ、降水量が減るにせよ、氷河にとってよろしくない状態になるとこの平衡線(図のオレンジの線)が高いところに移行します。この線より低いところでは氷河は融け続けることになります。
左の小型氷河のように、平衡線が氷河の一番高いところよりも上回ってしまった場合、収入である雪の供給がなくなります。こうなると、貯金を取り崩すしかなくなってどのみち氷河は消えてしまうことになります。
ところが、ヒマラヤの一番高い標高はエベレストの8848m。大型氷河と呼ばれる氷河は、7000m以上の標高が源頭になっています。cozyはここ十年くらい6000mよりも高いところはいってませんが、7000m以上が消耗域になっているとは聞いていません。
こういう状態(右)では、氷河は縮小するものの、雪の供給源となる「涵養域」がある限り、「消えてなくなる」ことはないはずです。
この平衡線が、過去から最近にかけて、どういう風に推移しているか、は気象データを計算する必要がありますが、その気象データがないことは先にも触れました。でも、これを算出するのはなかなかおもしろそうなテーマです。
PS ここ最近、日本のヒマラヤニスト(敢えて登山家とはいいません)が、「ヒマラヤの氷河が融けている!8000mでも融けている!」と騒いでいますが、「融けている」≠「消耗している」であることに注意が必要です。その融けた水は、氷河全体から失われていますか?を確認する必要があります。おそらく6000m以上では、融けた水の多くは氷河の中で再凍結することで、氷河からは失われていないはずです。目先の現象に惑わされてはいけません。