「女流作家であり政治思想家アイン・ランド (Ayn Rand/1905-1982)」
夢の散策記録
女流作家であり政治思想家アイン・ランド (Ayn Rand/1905-1982)
ユダヤ系ロシア人としてサンクト・ペテルスブルグに生まれ、ロシア革命後の混乱を避けて1926年に アメリカに単身亡命しハリウッドでシナリオ作家をめざした。漸く1943年に小説『水源』(The Fountainhead)を発表して注目を浴びる。1957年に出版された『肩をすくめるアトラス』(Atlas Shrugged)は1000ページ以上のボリュームでありながらも、アメリカではひとつの「古典」として出版以来ずっと読みつがれているそうです。
小説表題のアトラスとはギリシア神話の天球を支える巨人アトラスである。つまりこの世界を支えるアトラスのような人々が「もうやめた」とばかりに「肩をすくめた」らというのが小説内容である。
全体主義的・福祉偏重主義的風潮のなかで、個人として能力のある人々が社会の犠牲=頭脳労働や精神活動における奴隷となっています。その現代の奴隷が反逆し、新しい社会…誰をも奴隷にしない社会の建設を目指すというストーリーとなっています。
ランドのもうひとつの代表作『水源』は、超人の創造者、ハワード・ロークが物語の中心でしたが、この『肩をすくめるアトラス』では、そのローク級の人物が、それぞれのストーリーを抱えて多重的に、また謎を含んで物語が展開してゆきます。
構成的にも、ロークの友情と愛、創造者としての誇りが全編通して語られ、卑劣な妨害者がいても「青春」の雰囲気が漂う『水源』に比べて、『肩をすくめるアトラス』は、「現代の奴隷」にされた人々の悲しみや徒労感、他人や世間だけでなく兄弟や母、妻といった家族までもが彼らを奴隷にしているけれども人間としての絆を絶てずに苦悩するシーンがある等、かなり雰囲気は違っていました。
『水源』に端を発したランド思想はまさにこの『アトラス』にてひとつの完成を見ています。それは、最終的に現代の奴隷が旧社会と決別し新しい社会を目指すという、極限的な完成です。この極端さも、ランドがアメリカにおいてもしばしば敬遠される一因のようです。
ですが、たとえランドの思想を支持できなかったとしても、この小説の思想と言葉は読む人の心に残るでしょう。そういう力を持った小説だと思います。

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