すぐ近所の豆腐屋のおばさんは、数十年来の顔見知りだ。
子供の頃は、小銭を握りしめて、
母に言いつかった「お豆腐一丁、あぶらげ二枚くださいな!」を
口の中で復唱しつつおつかいに行ったものだし、
働くようになってからは、会釈をして店の前を通り過ぎたご近所さんだ。
それが、この公開で初めておばさんと「会話」というのをした。
古い物が大好きで、お茶碗やら草鞋やら杖やらを
ちゃきちゃきと物色していく。
こんなのは?と聞いてみても、
「いいや!それは駄目だ。こういう色がいいわけ!」
と選択眼が実にハッキリしている。
こんなふうに喋る人だったんだ。
こんな感じの人だったんだ。と思った。
数十年来病気を患っていて、お姉さんと二人暮らしという。
私の母にしたら、豆腐屋の「おねえさん」だったのが、
ここで初めて母と同い年だと判明して
「えー、えー」と驚き合った。
長年のご近所さんでも、年齢を知ることなどは、
おつきあいに必須ではないんだなあ。
この公開を機に、人との距離の取り方のようなことについても
思索を始めることができたと思う。
私の中の価値観がゆっくり変換しているのを感じている。

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